スライドのアスペクト比率16:9はどこからきたのか?オンライン時代の今、4:3にもメリットはある!

2023年11月追記
スライド比率の判断基準となるような記事を掲載しました。
こちらもあわせてご覧いただければと思います。

https://incdesign.jp/%e3%81%a9%e3%81%86%e3%81%99%e3%82%8b%e3%82%b9%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%89%e6%af%94%e7%8e%872023%e5%b9%b4%e6%9c%80%e7%b5%82%e7%89%88/


2022年現在、スライドのサイズは16:9が主流と言われています。
IR資料を公開している企業のうち、デザインにも気配りをしているスライドの多くは16:9です。

ところが中には、4:3比率を生かしたデザインのスライドも、一部存在します。
比較的新しいIT系の企業に多い印象です。

アドウェイズ株式会社

株式会社サイバーセキュリティクラウド

そもそも「4:3」と「16:9」はどこからきた数字なのか?

調べてみると、映画の歴史に由来することがわかりました。ここからは映画好きな筆者の余談ですが、お付き合いください。ざっくり年表にするとこのようになります。

これだと因果関係がわかりにくいので、もう少し整理するとこうです。

※筆者の解釈を含みます。もし誤りがあればご指摘いただけますと幸いです。

1930〜50年代、テレビが普及すると映画館へわざわざ通う人は減少し、映画の売上は落ち込みました。そこで映画業界は、4:3のテレビよりも迫力ある映像を作るために、あの手この手でワイドな撮影方法を試みました。フィルムを半分にしたり、カメラを3台使ったり…

「めまい(1958)」をはじめとしたアルフレッド・ヒッチコックの多くの作品はビスタビジョン、「アラビアのロレンス(1963)」「2001年宇宙の旅(1968)」は70mmフィルムで製作されています。「シェーン(1953)」はなんと上下を無理やり削ることでワイドにされてしまいました。
これらの名画は比率が異なるため、一つのディスプレイで再生すると縦か横に必ず黒い隙間が生じます。もっと他にも様々な規格があります。


この技術の進化によるバラバラの隙間をなるべく最小限にとどめる最大公約数的な比率が「16:9」だそうで、HDTVの規格として採用されました。

なおウェス・アンダーソン監督はあえてこれらのアスペクト比を、時代を表す象徴として意図的に現代に取り入れています。

〜余談おわり〜

スライドの比率も、元々はPCモニターのサイズに従って4:3でしたが、ワイドモニターの普及に伴い、PowerPoint2013からデフォルトが16:9に変わりました。

ざっくりまとめると、【映像が変わった】→【映す媒体が変わった】→【スライドが変わった】と考えられます。

一方で、ビジネス文書の規格はA4と定められているため、配布資料も兼ねるパワポは今でも4:3が選択されます。

4:3比率のメリット

1.ハード的メリット(届け方の都合上のメリット)

コロナ禍において、株主総会をオンライン配信するという選択肢は急速に拡大しました。
また決算説明のアーカイブを残す外部サービスもあります。
その際、話者のワイプと並んだ状態で16:9のディスプレイにおさまりが良いのが4:3のスライドになります。

株主総会のオンライン配信の例

株式会社スマレジ 様( 13:15〜がわかりやすいです。)

決算説明会のアーカイブの例

弁護士ドットコム

2.ソフト的メリット(デザイン上のメリット)

実際にスライドを製作していると、16:9って横長すぎるな〜と感じることがあります。
横に長いということは、相対的に縦幅が足りないということです。

①4:3が最も使い勝手が良いと感じるのは「横に長い図とテキスト」を配置する時です。

色々とやりようはあるのですが、組み直しにくい横長の図って結構よくあります。
まず図を画面幅最大に設置し、残ったスペースでテキストを置こうとすると、
16:9は行長が長く行間が狭くなるのに対し、4:3なら行長が短く行間が確保できます。

一般的に人間が読みやすいのは一行40字程度までとされ、それより長すぎると視線の移動が大きくなるため推奨されません。
※実際にはこのダミーテキストのような文章をそのまま載せることはそもそも望ましくありません。

(例)

サイバーセキュリティクラウド様

②グラフもぎゅっとまとまり、横ばいでも山の形が捉えやすくなります。

業績右肩上がりのグラフでも、横に伸ばすと伸び率がなだらかに見えてしまいます。

(例)

サイバーセキュリティクラウド様

③ジャンプ率をつけやすく、タイトルにメリハリが出ます。

左右の「コンテンツ」は同じ比率で配置しています。右図で左図と同じフォントサイズを使おうとすれば、コンテンツを横長に圧縮しなければなりません。

(例)

スマレジ様

アドウェイズ様

まとめ

4:3スライドのメリットは、

  1. オンライン配信で話者ワイプと並んでもおさまりが良い
    • 「横長図×テキスト」のおさまりが良い
    • グラフが見やすい ※場合による
    • タイトルを大きくしやすい

16:9を有効活用するアイデア

それでも、映画の先人達が渇望したように、迫力のあるワイドな16:9もやっぱり捨てがたい…
そんな時は、必要に応じて12:9(=4:3)と4:9(=残り)に分割するアイデアはいかがでしょうか?(上記1.のメリットは適用されません)

ラクスル

もし左のテキストを図の上か下に配置しようとすれば、図はかなり横長に圧縮しなければなりません。

株式会社GA technologies

このようなアイコンを使用した図解は、横長に遠ざかると直感的に把握しにくくなるため、幅を縮められているのは賢明だと思います。

なお、筆者が受けた「4:3が増えている」という印象については定点観測をしたわけではなく、今回検証はできませんでした。現に、上に挙げた企業の多くが上場時から4:3で一貫しており、16:9からあえて4:3に変えたという記録はありませんでした。むしろ去年までの4:3デザインが記憶に残っていたのに今年から16:9に変わっていた企業もあります。
今後はIR以外の資料にも着目してみたいと思います。

長くなりましたが、以上です。

伝えるシーンや内容に合わせて、スライドサイズを生かしたデザインをしたいと思いました。

【参考】こちらの記事で紹介させていただいた決算説明会資料も6社中4社が4:3スライドでした。

生活のいろいろ|6・7月号

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