インクデザインスタッフたちの「仕事への姿勢」を紹介する社員インタビュー企画「ぼくのクリエイティブ、わたしのクリエイティブ」。
第4回目はインクデザイン3年目の金子玲子さんです。webサイトのデザインや紙媒体のデザイン・イラストを担当し、当企画での似顔絵も玲子さんが作成しています。
絵を描くことが好きで、大学と大学院で美術を学んだ玲子さん。デザインとの出会いをデザインに対する対する熱い思いを伺いました。
「デザインは社会の役に立たなければいけない」
高校時代、絵を描くのが得意だったので美術系の進路を考え始め、原研哉さんの『デザインのデザイン』という本を読んだんです。それが初めてデザインに興味を持ったときでしたね。
『デザインのデザイン』を読む以前の私が考えていたデザインとは、「センスのある人がやっている、なんだかおしゃれなもの」というぼんやりしたイメージでした。
でも、その本に出会ってデザインへの見方が一変。「アートは作者の内面を表現し、デザインは社会の側面を表現する。だからデザインは社会の役に立たなければいけない」というメッセージに衝撃を受けました。
原研哉さんが語るデザインに対する使命感や、デザイナーとしての矜持を感じた時の驚きは今でも印象に残っていますね。
この本を通じたデザインとの出会い以降、「社会の役に立つデザイン」というのは、私がずっと悩んでいる部分でもありますし、大事にしている部分でもあります。生み出したデザインが「どうやったら社会に受け入れられるか?」「クライアントに喜んでもらえるか?」を考える姿勢は、デザイナーとしてのキャリアを歩みはじめてから今に至るまで、根幹の考え方になっています。
デザインに集中できる職場環境に憧れて入社
インクデザインに入社したのは、より自分らしい働き方ができるのではないかと感じたからでした。
以前の職場から転職を考えたのは、ちょうどコロナ禍が始まったころ。以前から友人の明美さんにインクデザインの話を聞いていたので、雰囲気の良い会社だなという印象を持っていました。
直接的な入社の決め手は、インクデザインでは新型コロナウイルス流行の早い段階からリモートワークを進めていたこと。加えて、社員それぞれの事情に合わせて、潤さん(代表取締役)が柔軟な働き方を検討してくれる職場環境に惹かれたからです。
業務以外での負担をできるだけ取り除いて、デザインに集中できる環境を整えてもらっていることは、本当にありがたいですね。
変化の激しい時代に、人の手によるデザインの「クセ」を愛しむ
いろいろなデザインを見ていると「クセ」に気づくことがあると思います。世界的に有名なデザイナーであっても、身近な人が作ったちょっとした作品であっても。「これはあの人が作ったんじゃないかな」と思わせるような特徴的な部分のことですね。
デザイン制作の現場で複数人のデザイナーがデザイン案を持ち寄ると、それぞれのデザイナーのもつ背景や技術上の癖などの人間的な要素によって、「その人らしい」ものができます。私はそういったデザイナーのクセを見つけるのがとても好きです。
しかし仕事としてデザインに関わる場合は、なるべくクセが無い方が良いという意見もあります。
特に、広告や販促物のデザインでは、「初めに年齢や性別などまで細かく作り込んだ特定のターゲットを設定して作るのだから、誰が作っても最適な一つのデザインに決定されるはずだ」という考え方が生まれます。実際にマーケティング分析では、デザインの最適解を割り出すことも可能でしょう。
今後は、AIをはじめとする技術革新によって、個人的なクセが気づかない間に修正されたり、不要なものとして処理されたりするかもしれませんね。逆に、そういった未来では、クセのないデザインの最適解は機械に任せることができてしまうのだから、人間のデザイナーのクセが重視され始めるかもしれませんし……。
時代の変化によってデザイナーに求められる仕事が変容していくのは自然なこと。それだけでなく、未来は予想のつかない変化が多く起こるはず。だからこそ今、私は人間がつくるからこそ生まれる、クセのあるデザインを一層愛しく感じていますね。
社会の役に立つことで、愛されるデザインを
インクデザインでは株主通信のデザインを担当することが多いです。デザインする時には、各ページが伝えたいことを常に意識しています。
私がデザインに関わる前と後で、冊子が抱える問題をどのように解決したかが明確に伝わるように、デザインで印象の変化をもたらしたいと思ってます。
制作段階での最初のデザインへのアプローチは、デザイン対象を見きわめるところから。「本当に伝えたいことは何か?」「デザインが担う役割とは何か?」を論理的な視点から判断します。そして、受け取り手に上手く伝わるよう、丁寧にデザインに落とし込んでいきます。
私がデザインする対象の性質をこだわって分析するのは、デザインは対象の力を引き出すものだと思うからです。そして上手く対象を引き立てた結果、デザインそれ自体も愛され、親しまれるものになることを願っています。私自身がつくるデザインも、『デザインのデザイン』で語られるような、「社会的に役に立つ」ものでありたいです。
※聴き手・ライター:清田睦月
※イラスト:金子玲子
企画への想い
スタッフたちの「仕事への姿勢」を紹介する社員インタビュー企画「ぼくのクリエイティブ、わたしのクリエイティブ」。
インクデザインのスタッフたちは、お客さまの価値を社会に伝えるべく、日々クリエイティブのちからを発揮し続けています。2013年の設立以来、所帯も大きくなり今やスタッフ10名以上。社内のスキルや発想の幅もぐっと広がりました。
一方で、リモートワークが中心となり社内交流が減ってしまった寂しさも感じる昨今。そこで、「豊かなコミュニケーションが、より価値のあるクリエイティブにつながるはず!」という想いのもと、交流の活性化を目指し、社内インタビュー企画を立ち上げました。
ぜひ、社員一人ひとりの「クリエイティブへの姿勢」に出会ってみてください。この記事をきっかけに、インクデザインを少しでも身近に感じていただければ幸いです。