こんにちは、入社してからまもなく半年となります、デザイナーのNです。
これまでなかなか印刷現場に立ち会う機会がなかったのですが、この度名刺の刷り直しが必要となり、そのチャンスが巡ってきました。
しかもインクデザインの名刺は、とても珍しい方法で作られているのだとか・・・。 この記事では、その体験についてレポートさせていただきます!
「世界でたった1枚の名刺」誕生の裏側
そもそも、インクデザインの名刺は「世界でたった1枚の名刺」というコンセプトで作られています。
名刺交換という日常的なビジネスシーンの可能性を広げたい。紙のメディアだからこそできる、新しい挑戦をしたい。そんな想いがサンコー印刷さんと共鳴しあい、実現しました。
本来、緻密で高精度な仕上がりが魅力の「オフセット印刷」を使い、画一的でない仕上がりを目指す。そんな難しい挑戦を、さまざまなアイディアや工夫で形にしたのが今回印刷する「世界でたった1枚の名刺」なのです。
印刷工程での工夫
サンコー印刷さんが印刷工程で行った、具体的な工夫は以下の3つ。テーマはズバリ、「普段やってはいけないことをあえてやる」、です。
- インキの濃度が上がってくるまでの濃度差を利用する。
- ローラーに色を塗って色ムラを起こす。
- 印圧を調整してかすれを起こす。
それぞれについて、実際のようすと合わせて詳しく説明していきます。
1. インキの濃度が上がってくるまでの濃度差を利用する。
オフセット印刷では、印刷機に版をセットしてから、インキがしっかりと乗って濃度が安定するまで、なんと200〜300枚もの紙を通すそうです。
その紙は本来すべて廃棄されてしまうのですが、この名刺作りではあえて、最初の1枚から本番としています。
なので、最初の方は色がとても薄かったり、水と油のバランスが不安定で滲んでいたりします。でも、そこにとても味わいがあるのです。
2. ローラーに色を塗って色ムラを起こす。
通常は、CMYKそれぞれのインキの濃度が適正になるように、細かい調整が求められます。
ですがこの名刺ではあえて、ローラーに直接インキを塗り、濃度差が極端に出るようにします。
立ち会ったインクデザインの社員も、実際にインキをベタッと塗らせていただきました。通常の印刷ではありえない工程なので緊張しましたが、とても面白い体験でした・・!
この作業により、1枚1枚に違う表情が生まれるのです。
3. 印圧を調整してかすれを起こす。
1と2の工程を経て印刷を進めていくと、最初の100枚程は一枚一枚違う表情で刷り上がるのですが、
だんだんインキの濃度が安定し、画一的な仕上がりになってきます。
そこで、インキ量を150枚目くらいまで濃度差が出るように調整し、さらに濃度が上がり切ってからは印圧をあげるという方法をとっているそうです。
印圧とは、ブランケット胴と圧胴の間の紙が通って行く隙間にかける圧力のことを指します。
本来適正な印圧をかけることで一定の仕上がりを目指すところを、適正値を下回らせることで意図的にかすれを作り出すのです。
これにより濃度が上がり切ってからも、多様な仕上がりを実現できます。
おまけに
印刷途中、向きを間違えないように専用の道具を使って印をつけるのですが、
今回は自由に描いてよいとのことでしたので、それぞれ思い思いに描かせていただきました!
これがどんなふうに刷り上がるのでしょうか・・?
前編まとめ
このように、印刷段階での3つの工夫により様々な表情が作られています。ただ、これで終わりではありません。
「断裁」にも工夫を凝らすことで、より「世界でたった1枚の名刺」に近づくのです。
それについては、後編にてレポートいたします!
ちなみに・・自由に描き加えた部分は、このような仕上がりになりました。
ここが自分の名刺になった方は、アタリですね!