IPOを目指す企業が投資家に対して自社の魅力を最大限に伝える上で、最も重要なツールの一つが「成長可能性に関する説明資料」です。
本記事では、IR資料制作支援事例が豊富な私たちインクデザイン株式会社で、実際に成長可能性資料やロードショーマテリアルなどの構成・編集に携わっているIR専門のエディターが、最新の「成長可能性に関する説明資料」を読み解きながら、どのような資料が投資家の心を掴んでいるのか、投資家に伝わるIR資料の極意を探ります!

参考文献
- ライフクリエイト様:引用(https://be-lifecreate.com/ir/)
- 株式会社リップス様:引用(https://lipps.co.jp/ir/news/)
- 株式会社エータイ様:引用(https://a-tie.co.jp/ir/)
- ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社様:引用(https://wellcoms.jp/company/outline/)
※当社の実績ではございません。
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※各社様資料引用の目的は「事業計画及び成長可能性に関する事項」の内容をわかりやすく伝えるためです。
なぜ有報に加えて「説明資料」も公開するのか?
IPOを目指す企業にとって、金融商品取引法に基づき開示が義務付けられている有価証券報告書(以下、有報)は、企業の過去から現在に至る事業内容、財務状況、リスク情報などを網羅的に記載する最も重要な法定開示書類です。しかし、IRの視点から見ると、有報の公開だけでは、ステークホルダーへの訴求力として物足りないところもあるかもしれません。
1. 有報は未来を語る力が弱いから
有報は、企業の詳細な事実関係を正確に、かつ網羅的に記載することを目的としています。特に財務諸表などは過去の実績数値が中心となり、企業の現状を理解するには不可欠な情報源です。しかし、新規上場を目指す企業にとって本当に重要なのは、「これからどのように成長していくのか」という未来の展望です。
有報にも「事業等のリスク」や「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」といった項目で将来に関する記述はありますが、これらはあくまで事実に基づいたディスクロージャーの枠組みの中での説明に留まります。
投資家が求めるのは、「投資判断の動機付けとなる未来像」です。企業の具体的な成長戦略、市場での競争優位性、そしてその戦略がどのように企業価値向上に繋がるのかといった情報を、有報単独で魅力的に伝えるには限界があります。
📍 説明資料ではこう見せる!


成長領域でのトップシェア獲得と市場の拡大、さらには新規商品への展開という、明確なロードマップを視覚的に示し、未来への成長ストーリーを強く訴求しています。


ビジョンやトップメッセージを掲載すると、創業者の思いや力強い未来志向をアピールしやすいです。
2. 正確さと投資家へのわかりやすさを両立するため
有報は金融商品取引法という法律に基づいて作成されるため、その記載項目や表現方法には厳格なルールが定められています。これにより、客観性と正確性は担保される一方で、専門用語が多用され、複雑な記述になりがちです。
有報ではこれらの情報も文字情報として記載されますが、どうしても視覚的な訴求力や、一目で理解できるような工夫が限られてしまいます。
幅広い層の投資家に対して、企業の魅力や成長ストーリーを効果的に伝えるためには、わかりやすさのための視覚的な工夫が有効です。
📍 説明資料ではこう見せる!


永代供養墓の企画・建立・運営・販売代行というビジネスモデルを、寺院とユーザー間の資金・サービスのフローを図解でシンプルに示し、収益構造を明快に説明しています 。
従来の墓との比較でユーザーメリットを端的に提示し、墓地業界という専門性の高い領域のビジネスモデルが理解しやすいよう工夫されています!
3. 投資家との対話を促進するため
IPOにおける「成長可能性に関する説明資料」は、単なる書類ではなく、ロードショーや投資家説明会といった場での「対話のツール」としての役割も担います。この資料を基に経営陣が自らの言葉で事業への想いや戦略を語り、質疑応答を通じて投資家の疑問を解消し、信頼関係を構築していきます。
有報はあくまで書面での開示であり、これだけでは一方的な情報提供に過ぎません。投資家は、企業のビジネスモデルの深掘りや、経営陣のビジョン、リスクに対する考え方などを直接聞くことで、より深く企業を理解し、投資に対する納得感を高めます。成長可能性説明資料は、ステークホルダーとの対話の質を高め、投資家のエンゲージメントを深めるための強力な武器となるのです。
📍 説明資料ではこう見せる!




実績を述べるだけなく、投資家が抱く疑問(例えば、特定の領域への集中リスクや新規出店戦略の具体性など)に対して市場環境などを背景として詳しく説明しています。投資家は経営陣のリーダーシップや戦略に対する確信度を高めることができます。
まとめ
有報は企業の「健康診断書」であり、その正確性と網羅性は揺るぎない基盤です。しかし、IPOという特別な局面においては、それに加えて企業の成長ポテンシャルを最大限にアピールするプレゼンテーション資料としての役割を担う「成長可能性に関する説明資料」が有効になります。
有報と説明資料、両者がそろうことでステークホルダーに対して自社の価値と、将来性が伝わりやすくなります!
6月は多数の企業様が上場しており、公開資料もバリエーション豊富でした!