【制作事例】商品パンフレット(撮影あり)

更新日:2025年11月9日

IR資料デザインの思考を、プロダクトデザインへ

インクデザインといえば、IR資料のデザイン、というイメージをお持ちの方が多くいらっしゃるかもしれません。いつも弊社の実績記事をご覧いただき、ありがとうございます。

もちろんIR関連のご依頼は弊社の主軸ですが、私たちが培ってきた「情報を翻訳し、本質的な価値をデザインする」というプロセスは、他の領域でも力を発揮します。

今回ご紹介するのは、私たちにとっては普段のIRとは少し毛色の違う、一般のデザイン会社にとってはある種当たり前の、PR領域にあるプロダクト(製品)のパンフレットデザインです。

クライアントは、株式会社グリーンマウス様。
製造から販売まで一貫した「メイドインジャパン」にこだわり、プロの美容師・理容師から絶大な信頼を集める、美容シザーのトップメーカーです。

この度、インクデザインではグリーンマウス社が自社史上最高級素材を使ってリリースした新しい美容シザー「Enzo(エンツォ)」の商品パンフレットをデザインしました。

キービジュアルは美容ともシザーとも程遠い、西洋の甲冑。
IR x デザインのロジックを持ち、「わかりやすく、おもしろく。」を掲げる私たちが、なぜこのビジュアルを選んだのか。その「デザインの理由」を少しご紹介させてください。

銀色のシザーに、いかにして魂を込めるか

ハサミの刃というのは、私たちが日常使う文房具のハサミやキッチンバサミであれ、美容のプロ向けのシザーであれ、その大半が「銀色」をしています。
もちろん、素材や切れ味、バランスは日々進化し続けていて千差万別ですが、その外見から「他社との違い」や「モデル間の違い」を瞬時に見分けるのは、とても難しいことです。

言葉でいくら「高級感」「重厚感」と伝えても、無機質な素材と品番が並ぶだけでは、どれも同じに見えてしまいます。

しかし、作り手であるクライアントにとって、「Enzo」は「いつもの銀色のシザー」ではありません。
最新の製鋼技術(粉末冶金法)で精錬した鋼を一度粉末状にしたのち、急速凝固して製鋼された「スーパーゴールド」という超高級刃物鋼材を使用して作り上げた特別な一振りです。

この目には見えない「Enzo」だけの情熱、思想、そして圧倒的な存在感を、「高級素材」といった言葉を使わずに、デザインの力で視覚的にどう翻訳するか。買い手の美容師さんたちにどう伝えるか。

つまり、いつもの銀色を、いかに特別な銀色に魅せるか。これが私たちの課題でした。

コンセプトを翻訳する、騎士という記号

クライアントから、このシザーの開発とデザインのコンセプトが「優雅で強靭な騎士の甲冑を思わせるシザー」であると聞き、表紙にシザーの写真を使わず、「騎士の甲冑」をデザインの核とするアイデアを採用することにしました。

あえて製品の全体像を見せない表紙は、漆黒の闇の中から、騎士の横顔(甲冑)が浮かび上がるビジュアル。これは単なるイメージではなく、希少な鋼材が炎の中で鍛え上げられる鍛造の工程、その緊張感を表現しています。

中面では、馬に乗り疾走する騎士のビジュアルを採用しました。これは甲冑が持つ「重厚感」「強靭さ」だけでなく、シザーが持つ「軽やかさ」「機能美」という二面性を表現するためです。
しっかりとした切れ味だからといって重いわけではない。華やかさと実用性を兼ね備えた「Enzo」の姿を投影しています。

今回シザーの撮影(物撮り)も私たちが担当しましたが、この重厚感と軽やかさの両立を訴求するために、通常持ち手(指掛け)を下、刃先を上にして撮影することの多いシザーを、あえて上下逆、刃先を下にして撮影した写真を使用しています。

陰影が強く出る形で撮影したシザーは金属の持つ重厚感と素材の高級感を伝えながらも、華奢な刃先が手前に置いたためか、どこか軽やか。そんな印象を与える工夫です。

「犬の関ヶ原」で見た景色を忘れずに

「言ってることはわからんでもないけど、美容シザーを売るパンフレットに、ここまで大きく騎士の甲冑を入れる意味ある?」

と思われるかも知れません。
実は、私たちにはこのクライアントと長年共有している、デザインに対する「哲学」があります。

筆者はこのクライアントとはもう20年近い付き合いになります。
かつて美容シザー専業だったクライアントが、新たにペット用(トリマー向け)シザーの市場に参入されることになり、ペット用シザーブランド「Pio」の立ち上げをご一緒したことがあります。

今後ペット用シザーブランドでどんな広告を作っていけば良いか、市場調査や勉強を兼ねてクライアントと一緒にペット業界の大規模な展示会を視察した際、私はある光景に衝撃を受けました。

それは、広大な会場を埋め尽くす、無数の「犬の写真」。
トリマーさん向けの商品だから「犬の写真」を使う。大きく引き伸ばしたワンちゃんの写真を壁一面に貼り、ワンちゃんののぼり旗を所狭しと立てたブース。その隣のブースもまた犬の写真、もちろんさらに隣も犬の写真です。

まるで合戦場かのように会場に乱立する「犬の写真がプリントされた数え切れない程ののぼり旗」を会場へ降りるエレベーターから眺めて、思わず私はクライアントに向けてこう呟きました。

「犬の関ヶ原やん」

髪を切るハサミのカタログだから、綺麗な長い髪の女性の写真を使う。
ペット用、トリマー向けのハサミだから、犬の写真を使う。
本当にそれが正解なのか。作り手側の一方的な「思考停止」で差別化が出来ていないのでは。

プロの技術者が道具に求める本質は、機能だけではないはずです。
「そのシザーを持つ自分がどれだけ誇らしく思えるか」
「どんな気分になれるのか」
その「感情的価値」こそ、デザインが担うべき領域だと、私たちはクライアイントと共に学びました。

以来、ペット用シザーのパンフレットで犬の写真を使ったことも、美容シザーのパンフレットで髪の毛の写真を使ったことも、ありません。

「らしさ」の呪縛を解き放つ、本質的なデザインを

情報を整理して、翻訳する。
本質に目を向けて、当たり前を疑う。
無難を積み重ねるよりも、記憶に残るビジュアルを。

そこにIRとPRの違いはありません。

インクデザインでは、IR資料で培った「ビジネス理解」と「デザイン表現」のノウハウを活かし、こうしたプロダクトのブランディングやパンフレットデザインのご相談も、積極的にお受けしております。

「らしさ」の呪縛に捉われず、製品やサービスに込められた本質的価値を、デザインの力で翻訳する。
そのお手伝いが必要でしたら、ぜひお気軽にお声がけください。

制作物商品パンフレット
依頼回数過去に複数回ご依頼実績あり
使用ツールIllustrator / Photoshop
制作インクデザイン株式会社
弊社担当範囲デザイン/構成提案/撮影/印刷
制作期間約2か月
座組プランナー:島 健
デザイナー:N.H
カメラマン:藤田 “RICH” 雅也(株式会社RICHEN)

(記事執筆・島 健)

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