
個人投資家向けページの役割が変化しています
かつては企業情報や財務データを網羅的に掲載する情報倉庫的な位置づけだった個人投資家サイト。しかし今ではYahoo!ファイナンスや四季報オンラインで基本データを手軽にチェックできるようになりました。
では、企業サイトの個人投資家ページには何が求められているのでしょうか。
それは、外部サイトでは得られない企業の本質的な価値と投資への納得材料を伝えることです。長期的なエクイティストーリー、投資家との対話姿勢を表現する場として、むしろ個人投資家サイトの重要性は増しています。
本記事では、最新のトレンドと具体的な改善ポイントを整理します。IR担当者の皆様が、自社サイトの改善を検討される際の参考にしていただければ幸いです。
① ランディングページ型がメジャー化

個人投資家サイトのページ構成には、大きく2つのパターンがあります。
- リンク集型
複数ページに情報を分散させ、クリックして詳細へ遷移する形式です。従来型の構成で、情報を体系的に整理しやすい特徴があります。
- ランディングページ型
1ページ完結で、スクロールすることで全体を把握できる形式です。近年、この形式を採用する企業が増加傾向にあります。
昨今のリニューアルでは、ランディングページ型が増えています
ランディングページ型が増えている背景には、3つの理由があります。

- 初心者投資家の「何を見ればいいか分からない」問題を解決できる
情報の優先順位を視覚的に示しやすく、投資初心者でも迷わず読み進められます。 - スマートフォンでの閲覧体験が向上する
何度もページ遷移せずに情報を得られるため、ユーザーのストレスが少なくなります。 - ストーリー性を一貫して表現できる
企業理解→事業内容→財務情報→投資判断という流れを、途切れることなく伝えられます。
【コラム】個人投資家サイトの「あるある」課題 |投資家の行動とサイト設計のズレ😔
実際のサイトを見ると、投資家の行動とサイト設計がズレているケースが少なくありません。IR担当者の皆様からよく伺うのが、こんなお話です。
😔 実質的なランディングページが、想定と異なる場所にある

例えば、東証プライム企業の個人投資家向けページを訪れる個人投資家は、すでに「優良企業である」という認識を持ってアクセスしていると考えられます。
特にPBRが高水準で推移している企業の場合、個人投資家にとって配当利回りは重要な投資判断材料にですよね。そのため個人投資家は配当金情報を一時情報で確認したいはずです。
ところが、リンク集型の個人投資家サイトの実情はこんな感じ。
- 個人投資家向けページはリンク集型で、配当情報は別ページへのリンクのみ
- 配当金ページはPDFの株主通信へのリンクだけで、HTMLコンテンツが薄い
- 結果として、検索で配当金ページに直接流入した投資家が、そこで離脱してしまう
つまり、個人投資家ページを入り口と想定していても、実際には配当金ページが実質的なランディングページになっているケースが多いのです。この事実に気づかないまま、個人投資家ページだけを作り込んでも、期待した効果は得られません。
→個人投資家が真っ先に見たいコンテンツへの動線をわかりやすく示すことで解決できます。
😔😔 PDFに依存しすぎて、HTMLコンテンツが不足している

IR資料をPDFで提供するのは一般的ですが、個人投資家向けには以下のような課題があります。
- スマートフォンでPDFを開くのは手間がかかる(ダウンロード→別アプリ起動)
- 検索エンジンがPDF内のテキストをHTMLほど評価しない
- ページ内検索がしにくい
→配当推移のグラフや事業ポートフォリオなど、アクセスの多い情報はHTMLコンテンツとして充実させることで、ユーザー体験と検索流入の両方を改善できます。
😔😔😔 階層が深すぎて、目的の情報に辿り着けない
特にリンク集型のサイトでは、「個人投資家向けページ」→「財務情報」→「業績ハイライト」→「売上推移」といった具合に、階層が深くなりがちです。
何度もタップしないと目的の情報に辿り着けなかったり、戻るボタンで前のページに戻るのも手間がかかったり…結果として、途中で離脱してしまい、エンゲージメントが下がってしまいます。
→アクセス性の高い情報(配当、株価、業績推移など)は、できるだけ浅い階層に配置するか、1ページにまとめることが効果的です。
②アナリティクス解析に基づいた戦略的な改善が主流に
こうしたIRサイトの課題を発見するには、専門家の知見はもちろん、Googleアナリティクスなどのアクセス解析が欠かせません。
そして分析結果に基づいてサイト設計を見直し、個人投資家が活用しやすい場所になるよう継続的に改善することが大切です。

アクセス解析で、ストーリー性とアクセス性の両立を目指す
個人投資家サイトには、大きく2つの閲覧動線があります。ダイレクトアクセスで訪れた投資家を、自然にストーリーへ引き込み、ファン化してもらうことで長期的な投資を促すことができます。

- ストーリー型:「初めての方」→「事業を知る」→「財務を見る」→「投資を検討」という順を追った流れ
- ダイレクトアクセス型:「株価」「配当」「優待」など、知りたい情報に直接アクセス
最近のトレンドは、両方の動線を用意しつつも、ストーリー性を強化する方向です。例えば、配当金ページへの直接流入が多い場合、そのページを起点にストーリーへ誘導する設計に変更をおすすめしています。
アクセス解析から得られるのは、投資家の実際の行動です。想定していた導線と実際の行動にズレがあれば、そこに改善の余地があります。継続的にデータを見ながら、投資対効果の高い施策を積み重ねていくことが、個人投資家サイトの質を高める近道になります。
インクデザインでも、IRの視点からアクセス解析と戦略提案を行っていますのでお気軽にお声かけください!
③ 機能面で押さえるべきトレンド
ビジュアル重視の情報設計
個人投資家サイトでは、図解・グラフ > 説明文のバランスを重視した、インフォグラフィック化が進んでいます。

アクセシビリティとの両立
ビジュアル重視といっても、図だけでは不十分です。以下の配慮が必要になります。

- セクションごとにリード文で導入を示す
何の情報なのかを文章で説明する - 色だけに依存しない表現
赤字・黒字を色だけで区別せず、記号や数値の符号、アイコンでも示す - 表のマークアップを適切に行う
HTMLの表構造を正しく使い、スクリーンリーダーでも理解できるようにする - 認知特性の異なるユーザーへの配慮
視覚優位な方も言語優位な方も理解できる設計を心がける
これらの配慮は、アクセシビリティ対応としてだけでなく、幅広い投資家層に情報を届けるうえでも重要です。
ナビゲーション設計
ランディングページ型では情報量が多くなるため、ページ内リンクで素早く目的の情報へアクセスできるようにすることが重要です。

- 目次設置の標準化
- スキップリンクとの統合
ページ上部に「本文へスキップ」「目次へスキップ」を設置する - キーボード操作への対応
Tabキーで目次内を移動し、Enterキーで該当セクションへジャンプできるようにする
モバイルファーストの徹底
スマートフォンでの閲覧を前提とした設計は、高水準での最適化が求められます。

- タップターゲットのサイズを適切に設定する
指で押しやすい大きさ - 片手操作に配慮する
重要なナビゲーションは画面下部にも配置する - 読み込み速度を最適化する
画像の遅延読み込み、不要なスクリプトの削減 - テキストサイズの調整可能性を確保する
ユーザーがブラウザのテキストサイズ設定を変更しても、レイアウトが崩れないようにする
FAQ・用語集の充実
より詳しく企業を知りたい方向け、そして対話姿勢を示すためのサポートコンテンツを増やしている企業が増えています。

FAQ・用語集の充実は、投資家との双方向コミュニケーションの姿勢を示すことにもつながります。
継続的に改善サイクルを回す
個人投資家サイトの改善は、一度作って終わりではなく「投資家との対話」を継続するプロセスそのものです。重要なのは、アナリティクスデータに基づいて仮説を立て、改善を重ねていくサイクルを回すこと。
自社の企業価値を伝える重要な接点ですので、ぜひ自社サイトの現状を分析し、投資家との対話を深めるための第一歩を踏み出していただければと思います。



















