【前編】コーポレートガバナンス・コード改訂で何が変わるか?改訂案の要点を整理

更新日:2026年3月9日

2025年2月26日、金融庁がコーポレートガバナンス・コードの改訂案を有識者会議に提示しました。今回の改訂は、開示項目の追加・修正にとどまりません。コードの構造そのものを組み替える、かなり踏み込んだ内容になっています。

コーポレートガバナンス・コードは2015年の策定以降、2018年・2021年と改訂を重ねてきました。今回の改訂では、開示の形式的な充実から実質的なガバナンスの機能発揮へと重心を移す方向性が示されています。

この記事では、最新の改訂案の主要な変更点を整理しています。IR業務に役立てていただけますとうれしいです!

参考:


目次


変更点① サステナビリティ関連規定の再整理

現行コードでは、「社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ課題」への対応は、個別の条項として記載されています。

改訂案では、これらの規定とサステナビリティに関する基本方針を定めた条項を新設される原則に統合する方向が示されました。サステナビリティへの対応は、独立した開示テーマとしてではなく、取締役会が監督すべき経営課題として再整理されます。

なお、TCFDに関する開示規定は、法令との重複があるとして削除される方針が示されています。有価証券報告書等での法定開示がすでに整備されていることから、コード上で改めて規定する必要がなくなったという整理です。

変更点② 多様性確保の規定が「補充原則」から「原則」へ

中核人材の登用等における多様性確保に関する規定は、現行では補充原則に位置づけられています。

改訂案では、この規定を原則へ格上げする案が示されました。コンプライ・オア・エクスプレインの対象として正面に位置づけられることになり、対応していない場合は理由の説明が求められます。人的資本や多様性は、努力義務的な位置づけから、ガバナンス上の重要事項として明確化される方向です。

「コンプライ・オア・エクスプレイン」とは、コーポレートガバナンス・コードで使われる仕組みで、「原則に従う(コンプライ)か、従わない場合はその理由を説明する(エクスプレイン)か、どちらかをやればいい」というルールのことです!

変更点③ 補充原則の再構築——47項目を3つに仕分け

今回の改訂における構造的な変更として注目されるのが、47の補充原則の再構築です。各補充原則は以下の3つに振り分けられます。

  • 原則へ格上げ
    コンプライ・オア・エクスプレインの対象として明確化
  • 解釈指針へ
    コンプライ・オア・エクスプレインの対象外。他の原則の補助的な位置づけ
  • 削除
    法令との重複や実効性の観点から整理

これにより、形式的な開示チェックリストとしての性格は薄まり、各原則の趣旨を自律的に解釈して説明することが求められる構造に移行します。開示の量的負担は軽減される一方で、「なぜそう判断しているのか」を自分の言葉で説明する質的な負担は増す方向です。

変更点④ 取締役会の責務の明確化

改訂案では、取締役会の責務として以下の方向性が示されました。

  • 成長の道筋を構築・提示する責務を負うこと
  • 成長投資や事業ポートフォリオ見直しについて具体的に説明すること
  • 現預金の有効活用も含め、資源配分の妥当性を不断に検証すること

取締役会は「ガバナンス体制を整備する機関」から、企業の成長戦略と資源配分に関する説明責任を担う機関として、より明確に位置づけられる方向です。

変更点⑤ 社外取締役に関する規定の強化

社外取締役については、以下の方向での規定強化が示されました。

  • 社外取締役の役割・責務の明確化
  • 質・量・独立性の確保
  • 支配株主を有する企業における独立性強化

特に支配株主を有する企業については、独立性確保に関する規定が一段強化される方向で、少数株主保護の観点が明確に盛り込まれています。


まとめ

今回の改訂案を通じて見えてくるのは、「コードに従う」から「コードの趣旨を自分の言葉で説明する」への転換です。開示項目を網羅することよりも、自社の経営判断の論拠を構造的に語れるかが、今後のガバナンス開示の質を左右するポイントになるでしょう。

後編では、この改訂がIR発信にどのような影響を与えるか、インクデザインとしての考察をまとめます!

そちらもぜひ参考にしてみてください👉


本記事は2025年2月時点の改訂案をもとに作成しています。最終的な改訂内容は確定後にご確認ください。

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