中小企業の経営者であるアキラは持続可能なビジネスへ取り組むと決めたが、どのように計画や方針を立てればいいか戸惑っていた。
そのとき聞いた言葉が「バックキャスティング」。
アキラは、「バックキャスティング」について相談するために、再びジュン博士に相談するために研究室を訪ねる。
博士、バックキャスティングって聞いたことありますか?
企業経営にどう活用するのでしょう?
バックキャスティングは、未来の目標を設定し、その目標を実現するために現在から逆算して行動計画を立てる手法だよ。
まずは、「目指す未来の姿」を詳細に描き出すことから始めるんだ。
なるほど、まずは目指す姿が大切ということですね。
それは、経営に大切と言われているパーパスやビジョンということでしょうか?
そうだね。
いろんな考えはあるけど、ビジョンは企業の長期的な目標を示し、バックキャスティングはそのビジョンを実現するための具体的な道筋を提供するんだ。
パーパスは企業の「なぜ存在するのか?」という存在理由で、パーパスに基づいた戦略策定や意志決定はバックキャスティングと言える。
なるほど。
とはいえ、理想論で終わってしまわないでしょうか?
確かに、明確でないビジョンは実装性がないと思われてもしかたない。
実装性を持たせるために次ようなことを行うといいかもな。
・ビジョンの明確化
・具体的な数値目標の設定
・定性的な目標の設定
・ロードマップの設定
・中期経営計画のような中・短期の戦略や取り組みの策定
ビジョンの実効性を高めるためにもバックキャスティングを行って現実的な計画や目標を立てるといいと思う。
また、バックキャスティングと同時にフォアキャスティングも行うべきだろう。
フォアキャスティング?
うむ。
フォアキャスティングは、現在の情報とトレンドに基づいて将来を予測するプロセスだよ。
・現状の業績
・世界情勢
・市場環境
・政治環境
などを捉え、今後の動向を読み解くことによって、ビジョンまでの道筋がより明確になると思う。
また、歴史や理念、創業者の想いなどを読み返し、ビジョン策定に取り入れることで、その企業らしい独自性のあるビジョンと道筋ができると思うな。
私のような中小企業でも、バックキャスティングやビジョン、パーパスは重要ですか?
どうしても目先の売上や資金繰りに追われてそこまで目が向かないのですが。
もちろんだよ。中小企業でも、長期的なビジョンを持ち、それに向かって進むことは重要だ。
バックキャスティングは、中小企業のようにリソースが限られている環境だからこそ、効率的に目標に向かって進むための指針を決めることができる手法なんだ。
苦しいときほど目線を先に向けるといいと思うぞ。
アキラは静かに頷く。
ビジョンの策定とバックキャスティング、組織マネジメントにはどのような効果がありますか?
博士は微笑みながら答えた。
ビジョンは、組織に方向性と明確な目的を与える。
それにより、従業員は自分たちの仕事が大きな目標に貢献していると感じ、モチベーションが向上するんだ。
さらに、チームを巻き込んだバックキャスティングを行うことで、チームワーク強固になり、リーダーシップ生まれ、リソースがより効率的に配分される。
結果として、組織文化が形成され、長期的な成功の基盤が築かれるんだよ。
そうですね。僕たちに今、足りていないことかも知れないですね。
では、ビジョンを作ろうと思った際に、具体的に何をすべきですか?
アキラはやや興奮して質問した。
ビジョンを作る最初のステップは、企業の核となる価値と目的を深く理解することだ。
その後、従業員や顧客からのフィードバックを集め、現状の市場環境を分析する。
そして、未来のトレンドや可能性を考慮して、理想的な未来像を描く。
最後に、そのビジョンを明確かつ魅力的な言葉で表現し、組織全体で共有するんだよ。
企業の価値と目的・・・自分だけではわからない事も多いですね。
そうだね、総じて自分のことは自分ではわからないもの。
第三者に入ってもらい、対話をすることで気付きを得たり、
従業員やお客様に話を聞いてみたり。
先代の残した言葉を読んでみたりすると良いかもな。
あとは、結局は君がどうしたいか、何を目指すか、それに尽きるな。
アキラはハッとして目を輝かせる。
ビジョンが明確になった後のバックキャスティングは具体的にどのようなことを行えばいいですか?
まずは、ビジョンの共有。
これは多くの方法があるが、大切なのは経営者の覚悟を伝えることだと思う。
そのビジョンに基づいてバックキャスティングを行い、ロードマップや戦略を立てていくのだが、それはスタッフを巻き込んで進めるのがいいかもな。
多様な意見がでると思うので、それらをまとめるために外部の専門家などと一緒にこのような方法を行うのも効果的だ。
・ブレインストーミング
・SWOT分析
・ワークショップ
・マインドマッピング
くれぐれも経営者である君の独りよがりにならないように気をつけないとな。
アキラは深く頷いた。
その通りですね。
経営者としての覚悟を伝えること、それが全ての始まりなのだと感じています。
私自身の信念を明確に伝え、スタッフ全員がそのビジョンに共感し、自分事として捉えられるようにしたいです。
アキラはジュン博士からのアドバイスを胸に、新たな決意を固める。
彼は自社のビジョンを明確に定義し、バックキャスティングを通じてそのビジョンを実現するための具体的な計画を立てることにした。
彼は、中小企業であっても、大きな夢を追い求め、未来への航海を進めることができると確信し、これからの道を進む。