
こんにちは!
インクデザインはデザイン会社でもあり、IR支援会社であるとも言えます。
そんなIR支援業界。意外と業界分析ってされていないですよね。
なぜなら、市場規模的にニッチな市場であるからと言えます。
ニッチとはいえ、当然ながら顧客の大半は上場企業。決して将来性がない業界・市場ではないと思います。
今回は、今後のIR支援業界を占うような市場分析の記事を、デザイン会社の視点を交えて書いてみました。
IR支援市場の現状・規模

日本のIR(Investor Relations)支援市場は、静かに、着実に拡大を続けています。
2024年の時点では、日本国内のIR支援関連市場規模はおおよそ500〜600億円規模と推計されており、特にESG(環境・社会・ガバナンス)対応やグローバルIRニーズの高まり、さらに統合報告書作成需要の急増を背景に、今後も成長が期待されています。
上場企業数の増加、特にスタートアップのIPO件数の増加も、市場の拡大要因のひとつです。
日本取引所グループによれば、2025年4月時点で国内上場企業数は約3,964社。こうした裾野の広がりが、IR活動に対するニーズを底上げしています。
IR支援企業の顔ぶれをみると、印刷会社を母体とする大手ディスクロージャー支援会社、大手独立系IRコンサル、証券会社系IR支援会社などが中心プレイヤーです。
それぞれが得意分野を持ち、法定開示支援、株主対応コンサルティング、英文開示サポートなど、多様なサービスを展開しています。
さらに、近年は「統合報告書」や「サステナビリティレポート」制作支援など、非財務領域への広がりも顕著。
統合報告書発行企業数は右肩上がりで増加しており、2024年現在ではプライム市場企業の過半数が統合報告書を発行する時代に入りました。
IRの世界はもはや、単なる財務情報開示の域を超え、企業価値そのものを市場と対話するための戦略領域へと進化していると言えます。
また、今後の成長を見据えた際、IR支援市場が1,000億円規模に達する可能性も十分に想定されます。
この規模は、日本国内のPR市場(約4,000億円規模)やコンサルティング市場(約2兆円規模)に比べればまだ小さいものの、専門領域としては非常に大きな成長ポテンシャルを持つことを意味します。
特にIRは上場企業全体に関わる必須領域であるため、今後は「第二のPR市場」として、独自に存在感を高めていくと考えられます。
外部環境
追い風要因

ESG投資の拡大
機関投資家によるESGを重視した投資スタイルが広がり、企業にもサステナビリティ情報開示の強化が求められています。
グローバルIRニーズの高まり
プライム市場上場企業には、2025年から「重要開示資料の英語開示義務」が課せられ、海外投資家への情報発信強化が不可欠に。英文IR資料作成や海外IRロードショー支援のニーズが急増しています。
コーポレートガバナンス高度化
コーポレートガバナンス・コードの改訂により、株主との対話(エンゲージメント)が経営課題として浮上。IR活動の高度化ニーズが広がっています。
統合報告書発行企業の増加
統合報告書発行が企業のスタンダードになりつつあり、非財務・財務一体型情報開示への対応支援が追い風となっています。
企業行動規範改訂予定
東証は2025年夏にも、上場企業が従うべき「企業行動規範」に、IRの担当役員や担当部署の設置、説明会や資料の充実を盛り込む方針を示しています。これにより、企業全体でIR体制を本格的に整備する動きが広がり、IR支援ニーズが一層高まることが期待されます。
向かい風要因

IR活動の内製化
上場企業の中には、IR専門部署を設けて内製化を進める動きも。特に大手企業ほど、社内リソースでIR体制を強化する傾向が見られます。
コスト削減圧力
景気変動により、IR関連予算が削減対象になりやすい局面も。特に資料制作・印刷系ビジネスには単価下落圧力がかかるリスクがあります。
上場企業数減少リスク
MBOやPEファンドによる非上場化が進むことで、長期的には上場企業数減少=市場縮小リスクをはらんでいます。
人材不足
市場の広がりが予測される反面、対応できる専門性を持った人材が不足することも予想されます。
市場を広げるには?
さて、そんな市場環境の中、IR支援業界の市場を拡大するにはどうすればいいか?

経営直結型IR支援への進化
資本コスト改善やPBR向上に向けたIRストーリー設計、CEO向けスピーチコーチングなど、IRを経営直結型サービスへと進化させる。
ESGストーリーテリング支援の強化
単なる形式的な開示ではなく、投資家に刺さるESGストーリーの設計・発信支援がカギ。
グローバルIR総合支援の確立
英文開示支援だけでなく、海外投資家ターゲティングやIRイベント運営まで包括的にカバーする。
中堅・スタートアップ市場の開拓
中堅企業や成長企業向けに、月額型など手軽なIR支援パッケージを提供し、市場の裾野を広げる。
テクノロジー活用による効率化・高付加価値化
生成AIやデータツールを活用し、低コスト・高品質な支援モデルを確立する。
ナラティブとデザインの融合
IR活動において、企業の成長ストーリーや存在意義を明確に伝えるナラティブ設計、それを直感的に投資家に伝えるデザイン力の融合がこれまで以上に重要になります。企業のメッセージを戦略的に構築し、視覚的に力強く表現できる支援が、これからのIR市場拡大に不可欠です。
非上場企業への可能性

IR支援=上場企業向け、という意識を超え、今まで培った専門性を非上場企業に向けて提供することも市場を広げる戦略です。
特に、環境・人的資本・ガバナンスといったサステナビリティ領域の情報発信は、非上場企業においても積極的に求められる時代となっています。
社会課題の解決やサステナビリティ推進に取り組むインパクト創出企業に対しても、IR的視点を取り入れ、資本市場やステークホルダーとの対話を設計することが、企業成長のドライバーになります。
今後のIPOもそのようなインパクト創出企業が増加すると予想されるので、これらの企業に対するIR支援も新たなマーケット拡大の糸口となるでしょう。
非上場企業向けには、
- 統合報告書型パンフレット制作
- パーパス・長期ビジョン制定
- 中期経営計画作成
- サステナビリティストーリー設計
- 社内外ステークホルダー向け説明会支援
など、広義のIR支援メニューを展開することが効果的です。
市場を広げる鍵は、「上場・非上場」の枠にとらわれず、企業の価値発信と対話設計を支援する姿勢にあります。
デザイン会社の可能性

さて、ここからがインクデザインならではの視点です。
今後、デザインを強みとするIR支援会社の重要性が高まってくるのは間違いないです。
これからのIRに求められるのは、
- 直感的にわかるビジュアル(わかりやすさ)
- 納得感のあるストーリーを感じさせる構成(ナラティブ)
- 感情にも訴える企業メッセージ(おもしろさ)
と考えます。
統合報告書や中期経営計画でも、抽象的な概念(たとえば「目指す姿」「パーパス」「気候変動リスク」「人的資本戦略」)をわかりやすく伝えるビジュアル化力が問われています。
そして何より、
デザインの力は、IR支援市場そのものの拡大に直結します!!
伝わるIR資料が普及することで投資家との対話が活性化し、資本市場における企業プレゼンスが高まる。
その結果、IR支援需要の裾野がさらに広がっていきます。
経営×資本市場×デザイン
この三位一体を実現できる企業こそ、次代のIR支援市場をリードする存在となると思いますし、インクデザインがそんな先陣になれればと考えています。
最後に
次代のIR支援市場は、静かに、しかし確実に変わり始めています。
単なる「開示サポート」から、「経営パートナー」へ。
その進化を支えるのは、ストーリー設計力と、デザインによる直感的な伝達力と考えています。
インクデザインではこのような業界研究・発信も含めて、まだまだニッチなIR支援業界の市場を広げていきたいと本気で考えています。
ぜひ、上場企業の皆様、IR支援企業の皆様、ディスカッションなどできればうれしく思います!