最近、企業の IR情報において「TCFD」という言葉を見かけます。
意味を調べてみると、「気候関連財務情報開示タスクフォース」とのこと。
ざっくり説明すると、企業が気候変動にどう対策していくかを分析し、開示したものです。
TCFDは、2022年4月から再編されるプライム市場の上場企業は必ず開示することが求められています。
これまでも多くの企業で、将来的なリスクと対策はまとめられていますが、
TCFDの場合は「シナリオ分析」という決められた方法に沿って行う必要があります。
今回は、既にTCFDを開示している統合報告書のページをピックアップしました。
一通り分析した上で、簡易的にまとめて開示している企業
1.東レ株式会社様より引用(https://www.toray.co.jp/ir/pdf/lib/lib_a580.pdf)
- 社会の変化
- 主要な機会・リスク
- 主な対応
- 機会・リスクの大きさ
こちらは抜粋とのことです。機会・リスクの大きさは1.5℃でも十分に大きいと言えるようです。
2.株式会社カネカ様より引用(https://www.kaneka.co.jp/assets/img/ir/library/annual/report2020b.pdf)
- 気候変動による社会環境変化
- 想定される社会環境変化
- 事業への機会とリスク
- 対策の方向性(既存の取り組み・追加の取り組み)
どちらかというとリスクよりも機会の方が具体性があるように見えます。
3.帝人株式会社様より引用(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3401/ir_material_for_fiscal_ym1/105795/00.pdf)
- ガバナンス
- 戦略
- 気候変動関連の機会とリスク
- カテゴリー
- 主な機会/リスク
- 時間軸
- 主な取り組み
- 気候変動に関するシナリオ分析
- 気候変動関連の機会とリスク
- リスク管理
- 指標と目標
こちらも大枠はフォーマット通りながら、一般人目線ではこのくらいコンパクトにまとめられている方が読みやすいと感じてしまいます。
ほぼ完全にTCFDの枠組みに沿って開示している企業
4.株式会社村田製作所様より引用
(https://corporate.murata.com/-/media/corporate/about/newsroom/news/irnews/irnews/2021/1115/murata-value-report2021-j.ashx?la=ja-jp&cvid=20211119005133000000)
- ガバナンス
- 戦略
- シナリオ分析の前提条件
- アプローチ
- シナリオ
- 対象範囲
- 時間軸
- 気候モデル/データセット
- 物理的リスク
- バリュー・アット・リスク
- 政策
- 想定される影響の把握
- 物理的な影響/移行の影響
- ビジネスへの影響
- 対策と戦略のレジリエンス
- シナリオ分析の前提条件
- リスク管理
- 指標と目標
この大枠は、TCFDが提言するフォーマットに完全に沿った開示です。
今後他の企業もこのくらい拡充させることを目指すのではないでしょうか。
5.シャープ株式会社様より引用(https://corporate.jp.sharp/ir/library/annual/pdf/2021/annual_2021j_int.pdf)
- ガバナンス
- 戦略
- 事業リスク/事業機会
- 種類
- 時間軸
- リスク/機会
- 主な対応
- 事業リスク/事業機会
- リスク管理
- 指標と目標
大枠フォーマット通りです。リスクは中〜長期的に、機会は短〜中期的に訪れると想定しているようです。
現段階では簡易的、今後分析を拡充していく予定の企業
6.富士電機株式会社様より引用(https://www.fujielectric.co.jp/about/ir/pdf/ar2021/all.pdf)
- 概要
- 採用シナリオ
- 考慮すべき主な外部環境
- リスク
- 機会
引き続き検討を進めるとの表記があります。
今のところは、どの企業も、表と文章でぎっしり書かれています。
読んでみて感じたのは、1〜2ページにおさまるような話ではないな!ということです。わかりやすさをとるならこれだけで一冊刊行してもいいくらいの、スケールが大きな話です。それを箇条書きでまとめているので、どうしても初見ではとっつきにくいと感じるかもしれません。
今後「価値創造プロセス図」のように、図示するデザインもできていくのでしょうか?
TCFDついては、今後また詳しく解説していければと思っています。
これまでの統合報告書まとめ