「コロナ移住」
いま、不動産業界では異常事態が起きています。
通例では、セカンドハウスのビジネス業界は、2月の住み替えで活発化し4月ごろをめどに盛り下がりますが、このところずっと活発な状態が続いているといいます。
それはコロナウイルスが感染拡大する都市部から離れるための「コロナ移住」が理由です。
コロナ前と比べると、テレワークを実施する会社は約半年で倍以上に増加しました。
これらのリモートワークを推進する会社は大企業に多いことが特徴です。
日本では東京をはじめとした大都市にオフィスが一点集中しています。特に都心部のオフィス街の大部分は上場企業が占めています。
リモートワークが定着した場合、従来の都市部にいなければ仕事ができない=生活できないという常識が変わることになります。
そうすると自然と暮らしのあり方も変化するでしょう。
例えば、マイホームの購入や子育ての場の選択肢としての地方移住がより現実的になります。
これから社会の中核を担っていく20代、30代にとってリモートワークが標準になったとき、街並みも今とは一変するかもしれません。
感染爆発地帯から避難するためにセカンドハウスを求める「コロナ疎開」。
そこから半歩進んで、リモートワークが可能な分野では「コロナ移住」が始まっています。
働き方のこと
地方移住が進むとたくさんの構造的な問題が解決されるでしょう。
例えば、都市集住がやわらぐことによって待機児童問題などに代表される子育ての不自由さも改善が予見込まれます。
また人口の分散で地方の活性化が進み、都市部以外でもパート・アルバイトの時給が上がることが挙げられます。
パート・アルバイトの時給が上がることは女性や学生などの貧困層の底上げにつながり、社会全体に非常に良い影響があると考えます。
学びと金
現状では地方の学生がアルバイトをしながら学費を貯めることは難しく、貧困の連鎖が続いています。
地方と都市部の最低賃金の差は200円以上ほど開き、地域間の格差は歴然としています。
日本学生機構によると令和元年度の大学昼間部では、実に2.7人に一人の学生がなんらかの奨学金を利用しているといいます。
大学で4年間奨学金を借りた場合は、月々1万3000円~2万6000円程度の返済が14年~20年続きます。
貸与型奨学金で進学した学生は、大学を卒業した瞬間に最低でも400万円の負債を背負って社会に出ることになるのです。
約半数の学生が、40代半ばまで借金を払い続けなければ大学教育を受けられないというのは大きな問題です。
学びと地域格差
東京から離れるほど最低賃金が低くなる傾向から、学生の奨学金利用率も東京からの距離に関係するのではないかという仮説を検証しました。
そこで本件では東京からの単純距離ではなく、東京(新宿駅)までの交通費を距離として算出しています。
結果としては、奨学金利用率が高い都道府県は新宿から交通費にして10,000円以上の距離にあることがわかります。
興味深いのは、単純距離では遠い北海道も、今回の検証によれば「学びへのアクセス」は中間に位置しているということです。
つまり「学びへのアクセス」は距離や大学との接点よりも、むしろ経済格差に直結しているのです。
地方と都市との賃金格差は大きく、それが学歴格差につながり、ひいては子供の貧困問題に連鎖します。
しかし、学生の貧困や社会人の奨学金破産は「高望み」をした個人の責任なのでしょうか。
『教育劣位社会』(岩波書店)では、「高卒者が大卒者となることで、その人が生涯に支払う所得税は1500万円上昇する」ということが示されています。
逆に考えれば現在の伸び悩む生産性は、若年層を盛り立てることで改善されると考えることができます。
現時点の私たちの社会は、教育の機会を広く持つことは全体の良循環になることだという基本的な見方を失っているのではないかと思います。
前述した教育の機会均等について、一律に大学の授業料を無償化する動きがあります。
しかしそれでは一部の富裕層はさらに特権を得ることになりかねません。
公平さとは皆に同じように接することではなく、望む人に合った下駄を履かせるということです。
ぜひ、長期的に問題を見つめていかれることを望みます。
生き方のこと
働き方に悩む中で、場所に囚われずにより自分に合った生き方をしたいという若年世代は増えています。
これまでは地方では高い収入がみこめないために、都内大学に進学しても若い人材は地元に戻る選択を考えられないでいました。
延々と続いてきた惨状に歯止めをかけられるのはリモートワークをはじめとする新しい働き方であり、奇しくもコロナウイルスかもしれません。
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しかし、たとえリモートワークや「新しい生活様式」によって問題を解決することができたとしても、生きていくのは生身の私たちです。
日々、向き合う姿勢がなければ、似たような悲惨な問題は次々に湧いて出るでしょう。
学生の貧困問題は目に見える形の一例に過ぎません。
SDGs、誰一人取り残さないことはあなた自身のことでもあるのです。
自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、
後ろめたく思う必要はありませんよ。
サボテンは水の中に生える必要はないし、
蓮の花は空中では咲かない。
シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって、
だれがシロクマを責めますか。
(梨木香歩『西の魔女が死んだ』より)
働き方の選択肢が広がれば、今まで諦めていたことを諦めずに済むかもしれません。さらには未来の子供たちが夢を見ることにつながります。
仕事だけの時代ではないからこそ、生き方を働き方にできたら。
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文責:清田