ニュースで、CMで、SDGsという言葉を聞く機会も増えてきたこの頃ですが、いろいろなところにSDGsのヒントは隠れています。
今日は話題のマンガ、西村ツチカさんの『北極百貨店のコンシェルジュさん』を参考にSDGsについて考えます。
お客様は全て動物。謎の百貨店ストーリー!
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鬼才、西村ツチカの描く最新作は、
動物がいっぱい登場する王道のファンタジーです!
舞台は来るお客様が全て動物という謎の百貨店。
ヒロインは新人コンシェルジュとして働く秋乃さん(人間の女の子)、
彼女の前には毎回、「絶滅種」の動物のお客様が現れます。
長年連れ添う妻を喜ばせたい金持ちのワライフクロウ、
久々に会う父への贈り物をさがす女優のウミベミンク、
美しい彼女への求婚にひるむ若者のニホンオオカミ・・・
そして秋乃さんの周りには神出鬼没のフロアマネージャー、
温かく見守る上司や、きびきびとした態度の先輩、
斜に構えた謎の同僚など個性豊かなキャストが揃います。
可愛い動物のお客様たちの悩みが
一生懸命なヒロインの頑張りと機転で解決される
とにかく無敵に良いマンガです。
どこまでも現実的なファンタジーとして
秋乃さんは「お客様は神様です。教わったでしょ?」という高圧的なお客さんを接客するときに、困惑しながらも求められるままに土下座しそうになってしまいます。額には大粒の汗。
しかし、その仕事は適切(decent)でしょうか?
労働の尊厳が軽視され、ディーセント・ワークから状況が存在していることから国連で採択された働き方の基準です。
このチェックボックスに一つでもチェックがつかなくなったとき、働き方を見直すタイミングです。
かつて筆者も、学生時のアルバイト中にお客様に「踊れ」と言われるがまま、踊ってしまったことがあります。
仕事中につい無理な要望に応えてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。
「ディーセント・ワーク」の考え方を、仕事での要望が節度を越えているかの一つの基準にしてみると良いでしょう。
自分にとって、より良い選択の積み重ねで少しずつ変えられることもあるかもしれません。
働き方とジェンダー平等
SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」について考えてみます。
ジェンダーの不平等とは、必ずしも男女差別、女性蔑視と同じ意味ではありません。
性のあり方が理由で不自由な思いをしているのは女性だけに限らず、あらゆるジェンダー、すべての働く人の分だけ、無数のパターンが考えらます。
北極百貨店の中年男性の登場人物たちの豊かな表情も、見所の一つになっています。
従来の高圧的で野暮な中年男性のイメージに偏らない上司たちです。
ポップカルチャーの中で定着したさまざまなイメージも、押し付けになっているかもしれないということです。私たちの中にある知らず知らずのうちに硬くなってしまった部分のための話でもあるのです。
「弱さ」を生きること
本作品には、圧倒的に弱い立場である絶滅動物が登場します。
全体的に本作品は簡潔な会話文で構成されているのにもかかわらず、動物が絶滅した理由については詳細に書き込まれているギャップ。
そして作者にピックアップされて登場する動物の多くが、乱獲や生息地の収奪によって絶滅しているということ。
人間と自然という壮大な関係性だけに限らず、強者と弱者の関係として想像してみます。
弱さや障害とされていることは、その人だけの責任ではなく、社会が強いていることもあるかもしれません。
SDGsについて考えることで、自分とは異なる立場の人の暮らしに思いを馳せることなになればよいなと感じます。
弊社WebサイトでのSDGsについてのコラムももうすぐ1周年を迎えます。
コロナウイルスの流行を起点として目まぐるしい速さで生活が変化するなかで、いまだに捉えきれないSDGs・持続可能な発展という言葉に何度もつまづきながらコラムは続いています。
その中で自分にとって身近な糸口から、自分とは遠く離れたところのある問題を引き寄せることで、分かり合えなさを共有することができると感じています。
今回もご覧いただきありがとうございます。