中期経営計画資料の作成・改善に使えるテンプレート・チェックリスト配布【社内向け・投資家株主向け対応】

更新日:2026年1月16日


はじめに

本記事では、IR分野の編集者として多くの上場企業・上場準備企業の中計資料を手がけてきた経験から、中期経営計画プレゼン資料を作成・改善する際のチェックリストとテンプレートを配布します。

特に重要なのは、誰に向けた資料なのかを明確にすることです。社内向けと投資家株主向けでは、求められる情報も表現も異なります。本記事では、両方のパターンに対応したチェックリストをご用意しました。

中期経営計画プレゼン資料にこだわるべき3つの理由

1. 企業成長の実現可能性を示せる

中計を可視化する資料は、経営陣の本気度と実現可能性を伝える重要なツールとなります。特に上場企業や上場準備企業にとっては、投資家との信頼関係を構築する最初のステップでもあります。

2. ステークホルダーごとに求められる情報が異なる

中計資料の受け手は多様です。

  • 社内向け:経営幹部、管理職、一般社員。戦略の背景や具体的なアクションプラン、各部門の役割を理解し、一丸となって実行に移すことが求められます。
  • 投資家株主向け:機関投資家、個人投資家、アナリスト。財務目標の妥当性、成長戦略の実現可能性、ガバナンス体制、ESG対応などを評価します。

それぞれの関心事が異なるため、資料の構成や強調すべきポイントも変わってきます。

3. 資料のクオリティが企業の信頼性を左右する

投資家は資料の内容だけでなく、その体裁や論理構成からも企業の姿勢を判断します。

論理的で分かりやすいIR資料 → 経営指針が整理されている・実行力がある訴求に意欲的

社内向けであっても同様です。分かりやすい資料は社員の理解と共感を生み、組織全体の推進力となります。

中期経営計画プレゼン資料の基本構造

中計プレゼン資料は、一般的に以下の構成で作成されます。

内容社内向け投資家株主向け
表紙タイトル、期間、発表日
経営理念・ビジョンパーパス、ミッション、長期ビジョン
トップメッセージ代表者からのメッセージ
長期ビジョン5〜10年後のありたい姿
前計画の振り返り過去の実績と評価
市場環境認識事業環境と市場分析
中計の全体像計画期間、基本方針、定量目標
重点戦略具体的な戦略と施策
財務計画売上・利益計画、投資計画
資本政策・株主還元ROE、配当方針
ESG・サステナビリティ環境・社会・ガバナンス施策
人的資本経営人材戦略、組織開発
リスクと対応策想定リスクと対応方針
実行体制・ロードマップ推進体制とマイルストーン
まとめ・CTAメッセージの再確認、質疑応答

◎:必須、○:推奨、△:状況に応じて

資料作成で最も重要な3つの原則

中計資料を作成・改善する際は、以下の3つの原則を常に意識しましょう。

原則1:ストーリーで語る

中計は単なるデータの羅列ではありません。「なぜこの戦略なのか」「どうやって実現するのか」「それによって何が変わるのか」というストーリーで語ることが重要です。

原則2:数字で裏付ける

定性的な表現だけでは説得力に欠けます。可能な限り定量的なデータで裏付けましょう。

原則3:ビジュアルで伝える

文字だけの資料は読み通すハードルが上がります。グラフ、図解、フローチャート、アイコンなどを効果的に使い、視覚的に理解できるよう工夫しましょう。


中期経営計画プレゼン資料チェックリスト

ここからは、各スライドごとの具体的なチェックリストをご紹介します。

社内向けと投資家株主向けで重要度が異なる項目は、それぞれ記載しています。

サンプルデータはページ末からダウンロードできます。ベーシックな形を用意しましたので、適宜ご自身の会社のスタイルに合わせて使用してみてください。

※サンプルページ・テンプレートの内容はダミーです。実際の弊社の情報を示すものではありません。

表紙(タイトル)

チェックリスト

【共通】

  • 計画期間が明確に記載されている(例:「2026-2028年度 中期経営計画」)
  • 発表日または作成日が記載されている
  • デザインがコーポレートカラーや企業イメージと一致している

経営理念・ビジョン

企業の存在意義と目指す姿を示すスライドです。

チェックリスト

【共通】

  • パーパスが明確に記載されている
  • ミッション・ビジョン・バリューがある場合は、それぞれ体系的に整理されている
  • 自社らしさが伝わる表現になっている
  • シンボルやビジュアルで視覚的に表現されている

トップメッセージ

代表者から直接語りかけるメッセージです。

チェックリスト

【共通】

  • 200〜400字程度の読みやすい分量
  • なぜこの中計を策定したのか(背景)が語られている
  • 何を実現したいのか(目標)が明確
  • どのように実現するのか(方針)が示されている
  • 署名(役職・氏名)が記載されている

【投資家株主向け】

  • 市場環境への認識が示されている
  • 前期の成果への言及がある
  • ステークホルダーへのコミットメントが明確
  • 冷静かつ論理的なトーンで書かれている
  • 株主への感謝と還元方針への言及がある

経営ビジョン

中期経営計画の達成で実現したい姿を示します。

チェックリスト

【共通】

  • 具体的な到達年度が記載されている
  • 定性的なビジョンと定量的な目標の両方が記載されている
  • 中期計画との関係性が明確
  • 実現可能性を感じられる内容になっている

【投資家株主向け】

  • 市場規模やポジショニングが明確
  • 財務目標(売上・利益・ROEなど)が具体的
  • 達成に向けたマイルストーンが想像できる

前計画の振り返り

過去の実績を振り返り、次の計画への学びを示すスライドです。

チェックリスト

【共通】

  • 前中期計画の期間が明記されている
  • 定量目標の達成状況が数字で示されている
  • 達成できた理由、未達だった理由が分析されている
  • 主要な施策の実施状況が報告されている
  • 前計画からの学びが次の計画に活かされている

【投資家株主向け】

  • 目標と実績の乖離理由が客観的に説明されている
  • 外部環境要因と内部要因が区別されている
  • 財務指標の推移がグラフで可視化されている
  • 未達の場合、その反省と改善策が明確
  • 株主価値向上への貢献が数字で示されている

市場環境認識

事業環境の分析と、自社の置かれた状況を示すスライドです。

チェックリスト

【共通】

  • 市場規模や成長率などのマクロデータが記載されている
  • 業界トレンドや技術革新の動向が整理されている
  • 競合環境や自社のポジショニングが明確
  • 外部環境の変化が戦略にどう影響するか説明されている

【社内向け】

  • 市場の変化を「チャンス」として捉える前向きな表現
  • 自社の強みが具体的に理解できる
  • 競合との違いが分かりやすく説明されている

【投資家株主向け】

  • リスク要因も隠さず開示されている
  • 競合比較が定量的に示されている
  • 自社の競争優位性がロジカルに説明されている

中期経営計画の全体像

計画の全体構造を一覧できるスライドです。

チェックリスト

【共通】

  • 計画期間が明記されている(例:2026-2028年度)
  • ビジョン・スローガンが端的に表現されている
  • 基本方針(戦略の柱)が3〜5本程度に整理されている
  • 定量目標(売上・利益・ROEなど)が明確に記載されている
  • 全体像が1枚で俯瞰できる構成になっている
  • 図解やビジュアルで理解しやすくなっている

【社内向け】

  • 各戦略の柱がどう関連しているか理解できる
  • 部門横断的な取り組みが視覚化されている
  • 「自分たちの仕事がここに関わる」とイメージできる

【投資家株主向け】

  • 財務目標の根拠が示されている
  • 前計画からの成長率が明確
  • 業界平均や競合との比較ができる
  • KPIが適切に設定されている

重点戦略

具体的な戦略と施策を詳細に説明するスライドです。通常、複数枚で構成されます。

チェックリスト

【共通】

  • 戦略ごとに独立したスライドで説明されている
  • 各戦略の「背景・目的・具体策・KPI」が明確
  • 施策が具体的で実行イメージが湧く
  • 数値目標やマイルストーンが設定されている
  • 図解・フローチャートで視覚的に理解できる
  • 戦略間の優先順位や関係性が分かる

【社内向け】

  • 各部門・チームの役割が明確
  • 実行上の課題と対応策が示されている

【投資家株主向け】

  • 戦略の新規性や差別化ポイントが明確
  • 投資額と期待リターンが示されている
  • 実現可能性を裏付けるデータがある
  • リスク要因とその対応策が記載されている
  • 競合と比較した優位性が説明されている

財務計画

売上・利益計画と投資計画を示すスライドです。

チェックリスト

【共通】

  • 売上高・営業利益・経常利益・当期純利益の計画が記載されている
  • 3カ年の推移が表形式またはグラフで示されている
  • 前計画実績との比較ができる
  • セグメント別の内訳がある(複数事業の場合)
  • 成長率(YoY)が明記されている
  • 投資計画の内訳が示されている

【社内向け】

  • 各部門の売上目標が明確
  • 目標達成のための重要指標が共有されている
  • コスト削減や効率化の目標が具体的

【投資家株主向け】

  • 営業利益率・ROE・ROAなど主要指標が記載されている
  • 売上・利益の成長要因が定量的に分解されている(既存事業 / 新規事業など)
  • 投資の回収期間やROIが示されている
  • キャッシュフロー計画がある
  • 財務健全性指標(自己資本比率など)が記載されている
  • 保守的・中立的・楽観的などのシナリオが示されている(該当する場合)

資本政策・株主還元方針

投資家向けに特に重要なスライドです。

チェックリスト

【投資家株主向け】

  • キャッシュアロケーションが示されている
  • 配当方針が明確(配当性向の目安など)
  • 自社株買いの方針がある場合は記載
  • 株主還元と成長投資のバランスが説明されている
  • 過去の配当実績と今後の予想が記載されている
  • 総還元性向の考え方が示されている

【社内向け】

  • (通常は社内向け資料では簡略化または省略可能)
  • 会社の財務方針が理解できる程度の説明があればOK

ESG・サステナビリティ

非財務情報として、環境・社会・ガバナンスへの取り組みを示すスライドです。

チェックリスト

【共通】

  • E・S・Gが整理されている
  • 具体的な施策とKPIが設定されている
  • マテリアリティ(重要課題)が特定されている
  • SDGsとの関連性が示されている(該当する場合)

【社内向け】

  • 社員の働きやすさや多様性への配慮が示されている
  • 社会的意義が感じられる内容

【投資家株主向け】

  • 環境目標(CO2削減など)が定量的
  • ガバナンス体制が明確(取締役会構成、社外役員比率など)
  • 人的資本の情報開示がある(後述の人的資本経営と統合も可)
  • ESG評価機関のスコアがあれば記載
  • 気候変動リスクへの対応が示されている(TCFD対応など)

人的資本経営

人材戦略と組織開発の方針を示すスライドです。

チェックリスト

【共通】

  • 人材育成方針が明確
  • 採用計画や従業員数の推移が示されている
  • ダイバーシティ推進の方針がある
  • エンゲージメント向上施策が記載されている
  • 具体的なKPI(従業員満足度、離職率など)が設定されている

【社内向け】

  • キャリアパスや成長機会が示されている
  • 働きやすい環境づくりへの取り組みが具体的
  • 研修制度やスキルアップ支援の内容が明確
  • 評価制度や報酬方針が説明されている

【投資家株主向け】

  • 人的資本ROIや生産性指標が記載されている
  • 従業員一人当たり売上高などの推移が示されている
  • 専門人材の確保・育成戦略が説明されている
  • 女性管理職比率など多様性指標がある
  • 人材への投資額が明記されている

リスクと対応策

想定されるリスクとその対応方針を示すスライドです。

チェックリスト

【共通】

  • 主要なリスク要因が列挙されている(市場・競合・技術・規制・災害など)
  • 各リスクの発生可能性と影響度が評価されている
  • 具体的な対応策が示されている
  • リスクマネジメント体制が説明されている

【社内向け】

  • リスクを捉え、対応策を共有している

【投資家株主向け】

  • リスクを隠さず開示している
  • 定量的なインパクト分析がある(可能な範囲で)
  • コンプライアンス・内部統制体制が明確
  • 過去のリスク事象への対応実績がある場合は記載
  • シナリオ分析がある(該当する場合)

実行体制・ロードマップ

計画を実行するための体制とスケジュールを示すスライドです。

チェックリスト

【共通】

  • 推進体制が明確(誰が責任を持つか)
  • 年次別のマイルストーンが示されている
  • 主要施策の実施タイミングが分かる
  • モニタリング・進捗管理の仕組みが説明されている

【社内向け】

  • 四半期ごとのアクションプランがある

【投資家株主向け】

  • 経営陣のコミットメントが示されている
  • 取締役会の監督体制が説明されている
  • 主要KPIの進捗開示方針が記載されている
  • 年次ごとの達成目標が明確

まとめ

中期経営計画プレゼン資料は、企業の未来を描き、ステークホルダーとの信頼関係を築く重要なツールです。

本記事でご紹介したチェックリストを活用して、誰に・何を・どう伝えるかを明確にし、説得力のある資料を作成してください。

重要なのは、このベーシックな構成を厳守するのではなく、サンプルをもとに自社にとって最適な構成を足し・引きして検討することです。お悩みの場合はインクデザインのサービスを通じてアドバイスさせていただくことも可能です。

また、資料は実際の説明会や面談での反応を見ながら、継続的にブラッシュアップしていきましょう。

中期経営計画のさらなるブラッシュアップにお役に立てていただけますと幸いです。

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