【2030年へ向けて】統合報告書の未来【AI?XML?アクセシビリティ?】

更新日:2025年2月17日


こんにちは、インクデザイン 代表の鈴木です!

今日は統合報告書の未来について、大いに語ってみたいと思います。

統合報告書を発行する企業はこの数年、右肩上がりの状態で、日経統合報告書アワードも盛り上がりを見せています。

反面、企業においても制作会社においても負担は増える一方で、
・作れる会社がない。
・クオリティが下がった。
という声も聞こえてきます。

内容に関してもフレームワークを越えて、独自性の訴求やメッセージ性の表現、ブランディング要素の内包、マルチステークホルダー向けなど、バリエーション豊かになってきています。

また、昨今は日英同時開示の流れも進んでいます。

僕は性格が悪いので、うがった見方をしてしまうのですが、持続可能な社会へ向けて確実に進んでいるのを実感する反面、
「ある意味バブル感じゃない?」
と感じます。

つまり、このままずっと行かないでしょう・・・と。

ということで、これから統合報告書はどうやって行くのか・・・・
「2030年にはこうなっているよ!」って勝手に予測してみましょう。

今更何言っているんだ!というご意見もあるかもですが、
あくまで僕の妄想なので、お手柔らかに!

財務・非財務情報はXMLで標準フォーマット化される

統合報告書に限らず、今、企業の中では、財務・非財務データが散在する状況だと思います。
下手すると担当のローカルディスクのExcelで管理など。

そのデータを集める作業に手間取っている事も事実だし、有価証券報告書、統合報告書、会社案内など、媒体によってデータを手動でピックアップして編集する必要があります。

また、散在することでバージョンや正確性の管理などが課題になります。

有価証券報告書では今でもXBRLで構造化されたフォーマットを使用していますが、企業における財務、非財務の管理と開示もXBRLの拡張など、国際的にXML化が進むと思います。
既に進んでいるのかな。

XMLで構造化されるメリット

XMLで構造化されるメリットは多大だと思います。
投資家にとって、統合報告書は
「何処に何が書いてあるか探しにくい」
「他社と比較しにくい」
「データの加工ができない」
などの欠点がありますが、標準フォーマットになることで、それらを解決できると思います。

XML管理による開示の効率化

1つの標準XML(例えばXBRLの拡張版)で情報を管理することで、webサイトから有価証券報告書、決算短信、決算説明資料、統合報告書、会社案内まで、情報の整合性を保ったまま開示がスピーディに行えます。

DBによる管理とAIパーソナライズ

現状でもマルチステークホルダー向け、投資家向け等、ターゲットが様々な統合報告書。
XMLで管理し、ターゲットの属性によって、情報をピックアップし、文章もAIによってターゲット毎に要点や文体を書き換えることで、真のマルチステークホルダー向け統合開示が実現できます。

AIによる制作効率化

企業による作業はDBに情報を入力するだけになりそう。
それもざっくりの情報や他のデータをインポートするだけで、文章や見出しまで生成されると便利ですね。

多言語への翻訳もAIにより半自動になると思われます。

開示パッケージ(媒体)の多様性

今でも、ウェブ版、PDF版など媒体は様々で、その議論の答えは出ていない状態ですが、XMLをDM管理するようになれば、動的なコンテンツ生成が可能になり、ユーザーがニーズにより、web、PDF等の媒体を選ぶことができるようになります。

アクセシビリティへの対応

ユーザーが媒体を選べるように、ユーザーの属性によって、文字の大きさや色使い、音声読み上げ対応などが動的に実装することも可能。

標準化への現状でのハードルと課題

統一フォーマットの未確立

現時点では、ESG情報や非財務情報を包括的にカバーするXBRLが国内で整備されておらず、企業ごとに開示フォーマットや項目定義がバラバラになりがちです。
項目定義が肝なので、国際的、行政的な取り組みが必要かと思います。

導入コスト・運用負荷

XBRL等の新しいフォーマットを導入する場合、システム整備やデータ入力・タグ付けの工数が発生します。特に規模の小さな企業やリソースが限られている企業にとって、導入コストや運用負荷は大きなハードルです。
制作会社にとっても大きな投資になりますね・・・

非財務情報の標準化不足

財務データほど、非財務情報(ESG・ガバナンス・リスク情報など)は標準が確立していません。
企業独自の文脈や戦略を含むため、単純な数値化やタグ付けだけでは不十分なケースが多々あるので、標準化までは長い道のりになるかも。

AI活用におけるデータ精度と信頼性

AIで自動分析やレポート生成を行う場合、元となるデータが正確かつ体系的に管理されていなければ、誤った情報開示へ繋がってしまうリスクがあります。最終的なチェック体制の構築も課題です。

セキュリティ・プライバシーリスク

構造化データをクラウドや外部システムと連携させる際、機密情報の流出や不正アクセスなどのリスクをどう管理するかも大きな問題です。

デザイン会社・クリエイターはどうすればいい?

いろいろ推測しましたが、正直インクデザインで、上記のようなソリューションの提供は、技術的、能力的、資金的に難しいです。
ではデザイン会社としてはどのような価値提供をしていけばいいのか?

インフォグラフィックやデータビジュアライゼーション

構造化データを活用する最大のメリットの一つが、多様なビジュアライゼーションの容易化。
デザイン会社がXMLやXBRLに精通すれば、企業の膨大なESG・財務情報をグラフ・図表・インフォグラフィックとして「視覚情報としてわかりやすく」提示ことに価値を見いだせると思います。

UI/UX設計とカスタムレポート

統合報告書やESG情報をDBで管理して、webやアプリでの公開やPDFでのパッケージする流れも加速するでしょう。
前述のようにユーザーが興味のある項目だけをピックアップして閲覧できる、カスタマイズレポート生成の仕組みやアクセシビリティ対応など、デザイン会社ならではのUI/UX設計が求められる場面が増えていくと考えられます。

企業ブランディングとストーリーの可視化

これが本丸か!?
統合報告書の目的は「企業の価値創造ストーリーを伝える」こと。
AIで作成された情報を企業独自のブランドやコンセプトに合わせて編集・デザインし、「読み手を引き込むストーリーとして再構築する」部分は、人間のクリエイティビティが必要だと思います。
いわゆるナラティブってやつ。
また、トップやマネジメントをはじめ、人の声をシズル感持って伝えることができるのも人の力だと思います。

まとめ:標準化とデジタル化、AI活用による統合報告書の未来

日本ではまだ、ESG情報を包括するXML標準フォーマットが完全に確立されていないものの、今後国際的な動きに合わせてXBRLなどの構造化フォーマットが拡張される可能性は十分にあると考えます。

そうして、データが標準化、構造化され、DBで管理されることで、
・AIを活用した効率的な情報収集・分析・報告書作成
・パーソナライズされた動的開示
などが進むでしょう。

そんなとき、デザイン会社はどうする??
僕たちクリエイティブのプロは、これらのデータをいかに魅力的なビジュアルとストーリーに仕上げるか(ナラティブ)が新たな付加価値となると考えます。

統合報告書は、これまでの紙中心・PDF中心のレポートから、リアルタイムデータやインタラクティブなユーザー体験を提供できる総合的なコミュニケーションツールへと進化していくと予想しますし、我々クリエイターがそのように変えていくべきだと思います!!

でもやはり、自分達の技術・能力・資金を鑑みると、我々1社では成し遂げられない未来だと思っています。

同業の皆様ぜひ手を取り合って新たな未来を築いて行きましょう!!!

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