事業計画及び成長可能性に関する事項_株式会社テクノロジーズ(2023年3月15日)

この記事は、株式会社TOITOITO堀さん(ホリソウ@horisou)に寄稿いただきました。

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こんにちは。TOITOITO堀(ホリソウ@horisou)です。

毎月1〜2回ほど、インクデザイン株式会社のウェブサイトにグロース市場に新規上場した企業の「事業計画及び成長可能性に関する事項」についてレビューしています。

本日紹介するのは、2023年のグロース市場における最初の上場となった株式会社テクノロジーズ(以下「テクノロジーズ」といいます)。ITソリューション事業とSaaS事業を展開するテクノロジーズの事業計画について詳しく見ていきましょう。

株式会社テクノロジーズ(上場日:2023年1月26日)

※テクノロジーズの上場日は1/26ですが、執筆時点(3/20)で、新しい「事業計画及び成長可能性に関する事項」の資料がありました。こちらを参照してビジネスレポートをまとめています。

①株式会社テクノロジーズの事業内容、沿革

株式会社テクノロジーズは、株式会社ガイアで取締役副社長を務めていた良原広樹氏により、2014年8月に設立されました。(設立時の社名は株式会社BEL AIR)

2014年9月からSaaS事業として、転職マッチングサービス「jobs」の提供を始めます。2019年2月に「人材派遣会社向け業務管理システム」としてリニューアルし、2021年には販路拡大のため、人材サービスを手掛けるディップ株式会社と販売業務提携を、次いで代理店契約を締結しています。

テクノロジーズのもうひとつの主力事業は、セグメント別売上で9割を占めているITソリューション事業です。エンターテイメントに関連する映像ソフトウェア開発や、AI等のデジタル技術を利用したシステム・アプリケーション開発などの、受託開発を主に手掛けています。

事業別売上構成比(株式会社テクノロジーズ(2023年3月15日)|事業計画及び成長可能性に関する事項P14より引用)

主にITソリューション事業の売上を支えているのは、パチンコ、スロット等の遊技機台向けの映像ソフトウェア開発です。顧客のリピート率も99.7%(2022年1月現在)と高く、安定的な収益獲得源となっています。メーカーからの1次請け、他の開発会社を介した2次請けをそれぞれ手掛けていることから、業界内でも広く信頼されている企業であるといえるでしょう。

特にパチンコ、スロットの場合、店舗を訪ねるお客さんの多くは、遊技機台の前に長時間座ってゲームを楽しみます。同じ映像を繰り返し流すと飽きられ、退店してしまうでしょう。テクノロジーズは長年のノウハウをもとに、お客さんを楽しませ続けられること。新規参入企業ではなかなか真似できない強みだと感じました。

ITソリューション事業で現在注力しているのは、AI等のデジタル技術を利用したシステム・アプリケーション開発です。音声や画像を認識し、解析・提案を行なう開発事業の多くは、概念検証(PoC:Proof of Concept)の段階に留まっています。それでも、自動車自動運転のアプリ開発や、自動車遠隔制御システム開発など、次世代の社会環境を見越したシーズづくりに社会的意義があることは間違いないでしょう。

②何が成長要因になっているか(成長可能性と見込んでいるか)

テクノロジーズが成長戦略として最も詳しく説明しているのは、売上高の9割を占めるITソリューション事業です。特に注力しているのはAI領域で、他企業と連携しながら概念検証を繰り返し行なっているようです。

国内ITサービス市場予測は堅調に推移する一方、遊技機向けの映像ソフトウェア開発市場は微減予測がされているので、中長期的に売上比率を変えたいという思惑があるのでしょう。

事業別売上構成比(株式会社テクノロジーズ(2023年3月15日)|事業計画及び成長可能性に関する事項P31より引用)
事業別売上構成比(株式会社テクノロジーズ(2023年3月15日)|事業計画及び成長可能性に関する事項P32より引用)
ITソリューション事業の成長戦略(株式会社テクノロジーズ(2023年3月15日)|事業計画及び成長可能性に関する事項P33より引用)

テクノロジーズの強みのひとつは、顧客基盤です。例えば遊技機向けの市場は微減予測ですが、裏を返せば、顧客とも危機感を共有できているといえます。テクノロジーズが先行してAI領域の知見を溜めていることは、既存顧客にとっても心強いでしょう。単なる開発会社でなく、事業パートナーとして新たな事業展開していける可能性は十分にあるといえます。

もちろん、現在概念検証を行なっている大手企業との連携も模索したいところ。そのためには、既存のビジネスに熟知しているだけでなく、社会変化に敏感なディレクター、営業担当者、技術者の存在が不可欠です。採用活動強化とともに、新しい技術のキャッチアップを行なう人材育成が急務です。

③市場の見方について

テクノロジーズが展開しているSaaS事業は、2022年度にディップ株式会社と拡販における連携を行ないました。それがプラスに働き、直近1年間で大きく契約数(新規アカウント数は前年度に比べ4倍増)を伸ばしています。

ITソリューション事業の成長戦略(株式会社テクノロジーズ(2023年3月15日)|事業計画及び成長可能性に関する事項P38より引用)

一方で、2024年1月までの契約見込みは微減と堅く予測しています。このことから、テクノロジーズのSaaS事業は「販売パートナーの成否という外部要因に左右される=どれだけ契約数を伸ばせるか予測しづらい」ことが伺えます。

ディップ株式会社と同じような座組みを新しく作るのか、それともディップ株式会社とこれまで以上に強い連携を図っていくのか。競合が乱立する労務管理SaaS市場でシェアを握れるか、直近1年間の戦略が重要になっていくはずです。

ITソリューション事業の成長戦略(株式会社テクノロジーズ(2023年3月15日)|事業計画及び成長可能性に関する事項P34より引用)

④今後の課題

新規上場申請のための有価証券報告書」によると、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として以下6点を挙げています。

①SaaS事業の早期拡大化
②ITソリューション事業における事業領域の拡大
③人材の確保及び育成
④「jobs」の解約率の改善
⑤外注比率の低減
⑥内部管理体制の強化

SaaS事業の売上規模はまだ小さいものの、私は上記のうち「④「jobs」の解約率の改善」に注目しました。テクノロジーズは、SaaS事業が黒字化しないリスクの発生可能性を「低い」と見込んでいることから、ある程度の勝ち筋は見出していると予想できるからです。

SaaS事業を手掛ける会社にとって、解約率は最も重要な指標のひとつ。売り切りでなく、毎月「積み上げ型」で売上を得られるSaaS事業は、LTV(ライフタイムバリュー、顧客から得られる売上の総額)を最大化することがポイントです。つまり、顧客の新規契約と同じくらい、「いかに解約を阻止するか」が大切なのです。

あくまで私の予想に過ぎませんが、販売パートナーを得られたことによって、顧客の新規獲得はある程度見込みがたったものと思います。現状、テクノロジーズのSaaS事業の解約率は4%とそれほど高い水準ではありません。ですが、解約率を半分にすることができれば、LTVも一気に高まります。「クライアントの事業で活用されず、結果的に解約されてしまった」という事態を減らすべく、今後はカスタマーサクセス機能が重要になってくるでしょう。

──
これからもインクデザイン株式会社のウェブサイトにて、月1〜2回を目処に更新していく予定です。よければ、ぜひ覗いてみてください。

デザインで伝えたい思いを後押しする/デザイナー・イラストレーター 金子玲子

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