
2023年3月期決算以降、有価証券報告書を提出する上場企業に対して、「人的資本」に関する情報の開示が義務付けられ、最近では「人的資本」というキーワードを耳にすることが多くなりました。
「人的資本」とは、企業が持つ従業員のスキルや知識、経験、ノウハウといった無形資産のこと。
この「人的資本」の開示によって、ステークホルダーとの対話が深まり、企業の信頼性やブランド価値向上など、企業として多くのメリットが生まれています。
開示が義務付けられているもの以外でも、企業価値の向上やステークホルダーとの対話を目的とし、独自で「人的資本レポート」を発行する企業が増加しており、幅広く活用されています。
掲載内容は多岐に渡りますが、一般的には以下のような情報が多く盛り込まれているようです。
人材戦略 どのような人材を育成し、どのように活用していくかという企業の方向性。 |
多様性 性別、年齢、国籍、障がいの有無など、従業員の多様性に関するデータ。 |
エンゲージメント 従業員の企業への愛着や貢献意欲を示す指標。 |
スキル・育成 従業員の保有スキル、研修受講状況、教育投資額など。 |
労働環境・健康 労働時間、離職率、有給休暇取得率、健康経営への取り組みなど。 |
DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン) 多様性の尊重に加え、公平な機会提供と包摂的な組織文化の醸成への取り組み。 |
企業が「人」をいかに重要な経営資源と捉え、その価値を最大化しようとしているかを示す重要なツール。そんな「人的資本レポート」の他社事例を今回集めてみました。
※弊社の実績ではありません。
※本記事における各社IR資料の引用は、優れたIR資料を紹介し、デザイン業界の活性化に貢献することを目的としております。
大和ライフネクスト株式会社 様
引用:「人的資本レポート」より
https://www.daiwalifenext.co.jp/




人的資本のコンセプトや、多様な従業員の活躍、女性・男性の育休取得率や働きがいサーベイの活用、プロとしてのスキルや能力・資格を身につける支援の情報、各部門ごとの人的資本の現況をわかりやすく開示しています。
ANAグループ 様
引用:「Human Capital Story Book」より
https://www.ana.co.jp/group/




人財への投資による価値創造の好循環を生み出すサイクルや、従業員のエンゲージメント向上から顧客満足度、さらには経済的価値へと繋がる道筋が、定量的・定性的に示されています。マネジメントメッセージから始まり、理念体系や人的資本の価値創造ストーリー、チームワークや現場起点のエピソードなどを通じて、社員がどのように価値を生み出しているのか具体的な事例を写真やイラストを交えて分かりやすく開示しています。
マネーフォワード 様
引用:「Talent Forward Strategy 2025」より
https://corp.moneyforward.com/




「安心して働ける環境・文化の創造」「優秀で多様な人材の採用」「個人のポテンシャルを最大化する仕組み作り」「メンバーの自律的な成長支援」「個人の成長を組織成長に繋げる」といった5つの主要なテーマを中心に構成されています。AIの積極的な活用による生産性向上やイノベーション促進についても語られており、メンバーのインタビューを適宜掲載することで内部の様子も伝わりやすい内容になっています。
日本新薬株式会社 様
引用:「Human Capital Report 2024」より
https://www.nippon-shinyaku.co.jp/




「自律した社員」を尊重し支援することを基本思想とされており、「役割・責任・成果に応じた処遇」「主体的なキャリア形成と適所適財」「心理的安全性の高い組織」「柔軟な働き方」といった主要な取り組みについて開示されています。シンプルかつ視覚的に伝わりやすい配色で資料全体をまとめています。
日清食品グループ 様
引用:「Human Capital Report 2024」
https://www.nissin.com/jp




採用から育成、多様性推進、働きがいのある環境整備など、写真やイラストを多く取り入れ、分かりやすく掲載されています。特に、人材育成やデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応は、未来へ向けた戦略的な投資として強調されているのも特徴的です。
いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介した事例のように、各社の強みや理念を反映したレポートを作成することで、企業価値向上へきっと繋がるかと思います。
投資家や求職者など、社外とのコミュニケーションとしてだけではなく、従業員自身にとっても、企業の未来と成長性を測る上で欠かせない情報源となっている「人的資本レポート」今後も注目です!
ちなみに、中小企業ではあまり人的資本についての発信や開示はほとんどありませんが、IR資料を得意とする私たちインクデザインではこのような感じにまとめられています。
会社の歩みや今後の課題も見えてくるので、上場企業だけでなく中小企業でも「人的資本」の開示はおすすめです!