障害者差別解消法改正より、パワーポイントのスライド資料でもアクセシビリティが必要になる?
2024年4月より障害者差別解消法が改正されることにより、障害がある人に対しての対応(合理的配慮)が義務になりました。
デザイン会社である当社としては、法改正にかかわらず、高齢者社会なども踏まえて、今後のデザインではアクセシビリティ対応が必要であると考えます。
IRデザイン面でも、決算説明資料や中期経営計画、PDFの統合報告書などはアクセシビリティ対応が必要になりそうですね。
ただ、視覚デザインのアクセシビリティは感覚的な判断になりがちで、やや対応に悩むことも事実。
そこで、インクデザインとしては、今後参考になる、アクセシビリティの情報を発信していこうかと思います!
今回は、パワーポイントスライドのフォントについて。
スライド資料のアクセシビリティとは?
最初にスライドのアクセシビリティについて。
ざっくりですが、このような箇所に気を配るとよいかと思います。
明瞭なレイアウトと余白
複雑なレイアウトを避けて、一般的なレイアウトを使用する。余白も十分にとる。
適正な情報量
1スライドの情報量が多いと見にくいですね。情報を盛り込みせずに、冗長な表現を避ける。
見やすい色を使う
コントラストの高い配色を使用する。赤文字は意外と見にくい。
視覚的な要素
画像や図表は情報の理解においては便利ですが、わかりにくくならないようバランスが大切。
代替えテキストの設置
グラフや図は便利ですが、代替えテキストを設置することも必要。
そのアニメーションは本当に必要?
アニメーションが多いと見にくいので、必要でない限りは避ける。
専門用語はほどほどに
専門用語や難解な表現を避け、できるだけシンプルに。
読みやすいフォントの使用
読みやすいフォントを使用する。
IR資料でアクセシビリティに配慮する3つの理由
1.コンプライアンス、サスティナビリティの観点
法で義務化される以上、企業としては対応する必要があります。またサスティナビリティの観点でも障害を持つ方や多様な方への配慮は必要。
2.フェアディスクロージャーの観点
誰にでも見やすいように、わかりやすいように。という方針はフェアであると考えます。
3.そもそも投資家も人間であり、忙しい
見にくい資料は投資家も見るのに疲れて敬遠してしまう。
IR資料デザイン作成でオススメなフォント3選
では、本題。
本記事のテーマですが、アクセシビリティを配慮するにあたり、どのようなフォントを使えばいいのか?
スライド作成におけるフォント選択の重要性
IR資料の可読性を高めるためには、レイアウトや文章と並んで、適切な見やすいフォント選択が鍵となります。
先に結論ですが、この3つのフォントの中から選ぶとよいかと思います。
この3フォントなら視認性を損なうことはないと考えますが、極端に小さな文字はフォントの種類問わず見にくくなるので注意。
・メイリオ
・遊ゴシック
・BIZ UDゴシック
それでは、これらのフォントの特徴を紹介します。
メイリオ
Windowsに標準搭載の馴染みの深いフォント。
・デジタルスクリーン用に最適化されており、明瞭な表示が特徴。
・シンプルでモダンで、やや丸みのあるシェイプを持ちます。
・日本語の文字だけでなく、その他の言語の文字にも適しており、外国語でもイメージが崩れないです。
・Windows Vista以降のバージョンに標準搭載されているので、会社や組織を越えて作業する場合の互換性などもバッチリ!
・デザイナー受けが非常に良くない・・・ちょっと野暮ったい??
Windows標準のフォントだけあって、見やすさに欠点があるわけはなく、アクセシビリティにも十分に配慮されたフォントだと言えます。
メイリオのデメリットでは「やや野暮ったい」という点だけなので、迷ったらメイリオ使っておけばOK!
遊ゴシック
こちらもWindowsに標準搭載のフォント。モリサワとJiyuKoboが共同で開発。
・シンプルで清潔感があり、癖が少ないデザインが特徴。ややトラディショナルな印象だけどデザイナーは大好き。
・視認性が高いですが、やや細く、小さなサイズで使うには注意。
・Windows 8.1以降のバージョンに標準搭載されているので互換性やアクセシビリティも十分。Macとの互換性もあります。
・使いやすいシェイプで、多様なデザインニーズに対応できます。
・余白の多く癖が少ないフォントなので、文章として読みやすい。
デザイナー目線での加点が多くなりますが、
遊ゴシックは癖が少なく非常に使いやすくてカッコイイ。細さが気にならなければオススメ。
BIZ UDゴシック
モリサワが提供する、MORISAWA BIZ+の一部として提供されるフォント。
・ビジネス文書やプレゼンテーションに特化したフォントで、高い可読性が特徴。
・UDというだけあり、エビデンスに基づいたアクセシビリティ対応。
・Windows 10 October 2018 Updateより標準搭載。
・無償で配布されているので、標準搭載のPC以外やMacでも互換性あり。
・メイリオや遊ゴシックと比べると認知度はやや低い。
・デザイナー的には数字が癖があってがやや気になる。
・UD FONTマークを使用することが出来る。
・ややモッサリしたシェイプ。
MORISAWA BIZ+
https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/bizplus/
UD FONTマーク
https://www.morisawa.co.jp/fonts/udfont/mark/
これから国内では「BIZ UDゴシック」をはじめとしたUDフォント使用割合が増えること間違いないです。
エビデンスに基づいたユニバーサルデザイン対応であることと、UDマークの使用など、
「デザインにおけるアクセシビリティが感覚的な判断になりがち」
という現実がある以上、エビデンスやマークの記載などは、今後求められていく要素の一つですね。
つまり、障害がある人に対しての合理的配慮義務化に対して、UDフォントやUDマークはその義務を果たしているという根拠としての働きという側面もあると思います。
「BIZ UDゴシック」はWindows標準搭載なので、UDフォントの中でも最も使いやすい。
また、UDフォントに使用にかかわらず、アクセシビリティに配慮してデザインを行い、
「この資料は誰でにも見やすいように配慮をしています。」
のような文言をディスクレーマーと同じように表記するような対策も効果的だと思います。
終わりに
いかがでしたしょうか?
今まではパワーポイントのスライドフォントは好みで選ぶことも多かったこと思いますが、今後はアクセシビリティやユニバーサルデザインに配慮したフォント選びが必要になりそうですね。