
こんにちは。
インクデザイン代表の鈴木です。
最近、デザイン業界の方々とお話しすると、必ずといっていいほど生成AIの話題になります。
「新しいAIすごくない?」
「AIでデザイナーの仕事はなくなるのか?」
「これからどうすればいいのか?」
今日は、このような生成AIについての話題について考えてみたいと思います。
生成AIが進化して、デザイン業界はどうなるか?
まず、これまでの現状を見てみましょう。
デザイン産業の現状
「デザイン白書2024」によると、日本のデザイン業界は以下のような状況にあります。
- デザイン事業所数の推移
2009年:10,578件 → 2021年:9,821件 - デザイン事業所の従業者数の推移
2009年:47,163人 → 2021年:42,376人 - 産業構造
グラフィック・広告系が約60%を占める
12年間で事業所数は約7%減少、従業者数は約10%減少。どちらかというとシュリンク気味な業界とも言えますね。
縮小は、生成AI普及”以前”から始まっている
ここでの注目すべきポイント。
このデータは2009年から2021年まで。
つまり、生成AIが本格的に普及する前から、既にデザイン産業は縮小傾向であったということです。
その背景には、
- デジタル化による制作工程の効率化
- テンプレートやツールの普及
- クラウドソーシングの台頭
- 制作単価の下落圧力
などなどの要因がありそうですね。
生成AI普及によって市場縮小が加速する可能性が高い
では、生成AIが本格普及した今後はどうなるか?
デザイン産業の大部分を占める「グラフィック・広告系」の領域は、AIによる効率化の影響を受けやすい領域と考えられます。
- バナー制作
- SNS用画像
- ショート動画のビジュアル
- チラシやポスターのデザイン
これらのコンパクトなアウトプットは既に生成AIで十分なクオリティのものが作れるようになっています。
生成AIのクオリティと、世の中が求めるクオリティの一致
この流れを語るうえで、重要なポイントがあります。
生成AIの生成クオリティは日々向上していますが、同時に世の中が求めるクオリティのニーズも変化しているということ。
例えば、
- SNSのフィード上で瞬間的に消費されるビジュアル
- 短期間で差し替えられるキャンペーンバナー
- 大量に必要な商品画像のバリエーション
これらの用途では、「最高峰のクリエイティブ」よりも「素早く、適度なクオリティで、大量に」というニーズが強いですね。
つまり、AIが生成するクオリティと、市場が求めるクオリティが重なり始めていると思われます・・・
この一致は、デザイン制作業務の多くが生成AIに代替される可能性を示唆しています。
もちろん、効率化による労働環境改善など恩恵もありますが、それは同時に人材が減りやすい構造も意味しています。
インクデザインの仮説──制作から、戦略へ
ただし、これは「デザインが終わる」という意味ではないと考えています。
むしろ、デザインが進化するチャンスなのでは?とも言えます。
ここからは、私たちインクデザインの仮説と戦略をお話しします。
これが唯一の正解ではありませんが、一つの視点として参考になればと思います。
デザイナーの仕事を2つに分けて考える
デザイナーの仕事は、大きく2つのレイヤーに分けられます。
①制作(手を動かす)
配色、レイアウト、グラフィック制作など。見た目を形にする作業。
②戦略的な情報設計と意味づけ(考える)
何を、なぜ、どう伝えるか。情報を構造化し、ストーリーとして意味を与える作業。
AIが得意なのは①、人間が必要なのは②
①制作は、AIがどんどん得意になっていく領域です。
既にMidjourneyやChatGPT、Geminiで、高品質なビジュアルが作れます。
一方、②戦略的な情報設計と意味づけは、まだAIには難しい。
なぜなら、
- クライアントの本当の課題を引き出す対話
- 経営層の意図とステークホルダーの期待を理解する
- 何を伝え、何を伝えないかの戦略的判断
- バラバラな情報を一貫したストーリーとして紡ぐ
つまり『ナラティブストラテジーデザイン』これらには、人間的な理解と判断が必要だから。
私たちインクデザインは、この方向を強化するとともに、①制作でも、AIでは出来ないようなクオリティをアウトプットし続けるように進んでいきます。
ただし、これは数ある選択肢の一つだと思っています。
デザイン産業の未来──仮説と戦略を持ち寄り、市場を拡張する
最後に、業界全体に戻ります。
産業縮小の悪循環を止めよう!!
デザイン産業が縮小し続けると、若手が入らず、教育が縮小し、技術継承が途絶え、さらに縮小する。
この悪循環を放置すれば、産業全体が衰退します。
大切なのは、個社の勝ち負けではなく、業界全体の市場拡張
「どの会社が勝つか」ではなく、「デザイン産業全体をどう守り、拡張するか」
AIによる効率化と、デザイナーの役割の変化は避けられません。
でも、
『AIに仕事を取られる』
と市場が縮小するのを見ているのではなく、新しい領域にデザインを拡張していくことが必要ではないでしょうか?
それぞれの仮説と戦略を持ち寄る
私たちインクデザインは「戦略的な情報設計と意味づけ=ナラティブストラテジーデザイン」という方向に進みます。
でも、他のデザイン会社では違う仮説を持っているはずです。
- AIを活用した超高速制作
- 特定業界への特化
- デザイン教育やコンサルティング
- コミュニティデザインや地域創生
- プロダクトやUI/UX設計 など
どれが正解かは、まだ誰にもわかりません。
大切なのは、それぞれが仮説と戦略を持ち、それらを持ち寄って、業界全体として市場を拡張していくこと。
個社で競い合いながらも、業界全体では協力し合う。
一緒に、デザイン産業の未来を作る
AI時代は、デザインの終わりではなく、変化と進化の始まりではないでしょうか?
デザイン業界の皆様、
デザイン業界の未来は、私たち自身が作るものですから、
この変化を、一緒に楽しみましょう!!
※この記事の内容は、2025年12月時点の情報と筆者の見解に基づいています。















