IRサイトにアクセシビリティを取り入れる3つのポイント|他社事例を紹介

更新日:2026年2月13日

はじめに

アクセシビリティとは、年齢や障害の有無、見え方の特性に関わらず、できるだけ多くの人がwebサイトを利用しやすいように設計することです。IRサイトにおいても、アクセシビリティの考え方を取り入れることが、企業価値向上に重要な意味を持つようになっています。

本記事では、色彩検定UC級(色のユニバーサルデザイン)を持つスタッフが多数在籍するインクデザインが考える、IRサイトにアクセシビリティを取り入れる際の3つのポイントと、具体的な実装方法を解説します。

引用:旭化成様京セラ様NEC様象印マホービン様

※弊社の実績ではありません。
※本記事における各社IR資料の引用は、優れたIR資料を紹介し、デザイン業界の活性化に貢献することを目的としております。



ポイント① 投資家層の多様化に対応する

高齢層の個人投資家に対応

日本の個人投資家の平均年齢は上昇を続けており、60代以上の投資家が大きな割合を占めています。高齢になると、以下のような身体的な変化が起こります。

  • 視力の低下:小さな文字が読みにくくなる、コントラストの低い表示が見づらくなる
  • 色覚の変化:色の識別が難しくなる
  • 運動機能の低下:マウスやタッチ操作の精度が下がる、細かいボタンが押しにくくなる
  • 認知機能の変化:複雑な情報構造の理解に時間がかかる

多様な認知特性を持つ投資家

投資家の中には、視覚優位で図やグラフから情報を読み取る方もいれば、言語優位でテキストによる説明を好む方もいます。

また、発達障害や学習障害のある方にとっては、情報の提示方法が理解のしやすさに大きく影響します。

  1. 文字サイズの調整可能性
    ユーザーがブラウザのテキストサイズ設定を変更しても、レイアウトが崩れないようにします。固定サイズ(px)ではなく、相対サイズ(rem, em)を使用することで実現できます。
  2. 十分なコントラスト比の確保
    背景色とテキストの色のコントラスト比を、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)の基準である4.5:1以上に設定します。特に重要な情報は7:1以上が推奨されます。
  3. 情報の複数の表現方法を検討する
    • 数値情報:グラフ化すると同時に、HTMLの表でもデータを提供する
    • 事業説明:インフォグラフィックと並行して、テキストによる説明も記載する
    • 動画コンテンツ:字幕とテキスト版の議事録を提供する

📍 参考にしたい他社事例

旭化成様

グラフと表の両方で財務情報を提供しており、多様な認知特性に対応しています。こうした変化に配慮したサイト設計が、個人投資家との接点を維持するために不可欠です。


ポイント② 法的要請とESG評価への対応

障害者差別解消法の改正

2024年4月から、障害者差別解消法の改正により、民間事業者にも「合理的配慮の提供」が義務化されました。Webサイトのアクセシビリティ対応も、この合理的配慮の一環として位置づけられます。

具体的には、以下のような対応が求められます。

  • スクリーンリーダーで情報を読み上げられるようにする
  • キーボードだけで操作できるようにする
  • 色だけに依存しない情報伝達を行う
  • 動画に字幕を付ける

ESG投資における評価

アクセシビリティ対応は、ESG投資の「S(Social:社会)」の観点から評価される要素の一つです。障害者雇用や多様性への配慮と同様に、Webアクセシビリティへの取り組みは、企業の社会的責任を示す指標となっています。

特に、IRサイトは企業の情報開示の窓口であり、そこでのアクセシビリティ対応は、企業姿勢を示す重要なメッセージになります。「すべてのステークホルダーに開かれた情報開示を行う」という姿勢は、ESG投資家にとって評価のポイントです。

  1. キーボード操作への完全対応
    マウスを使わずに、すべての機能にアクセスできるようにします。
    • スキップリンクの設置:ページ上部に「メインコンテンツへスキップ」リンクを配置
    • フォーカスインジケーターの明確化:現在フォーカスされている要素を視覚的にわかりやすく表示
    • 論理的なタブ順序:Tabキーで移動する順序が、視覚的な順序と一致している

  2. 色だけに依存しない情報伝達
    色覚特性のある方にも情報が伝わるようにします。
    • 決算情報で黒字・赤字を色だけで区別せず、「+」「-」の記号や括弧()を併用する
    • グラフで複数のデータを表現する際、色だけでなく線のスタイル(実線、破線、点線)やマーカーの形も変える
    • リンクは色だけでなく下線で示す
  3. 適切な見出し構造
    スクリーンリーダーのユーザーは、見出し(h1, h2, h3…)を手がかりにページ内を移動します。見出しを論理的な階層で設定することで、情報構造を正確に伝えられます。

📍 参考にしたい他社事例

京セラ様

キーボード操作への対応や見出し構造が整備されており、非常にユーザビリティに優れています。ぜひアクセスして体感してみてください。


ポイント③ すべてのユーザーにとっての使いやすさ向上

ユニバーサルデザインの「カーブカット効果」

ユニバーサルデザインには「カーブカット効果」と呼ばれる特性があります。

これは、歩道と車道の段差をなくすために設置された縁石の切り下げ(カーブカット)が、車椅子ユーザーだけでなく、ベビーカーを押す人、キャリーバッグを引く人、高齢者など、多くの人にとって便利になったことに由来します。

IRサイトでも同様に、特定の障害のある方のための配慮が、結果的にすべてのユーザーにとっての使いやすさ向上につながります。

具体的な効果

  • 明確な情報構造は、誰にとっても理解しやすい
  • 大きなタップターゲットは、高齢者だけでなく、電車の中でスマホを操作する人にとっても便利
  • 動画の字幕は、音を出せない環境(電車内、オフィスなど)でも視聴できる
  • PDFの代替としてHTMLで情報提供することは、スマホユーザー全般にとって快適

SEO効果の向上

検索エンジンは、人間と同じように視覚的な情報を理解できません。そのため、アクセシビリティ対応で重視される以下の要素は、SEO対策としても有効です。

  • 適切な見出し構造(h1, h2, h3…)
  • 画像の代替テキスト(alt属性)
  • セマンティックHTML(header, nav, main, article, asideなどの適切な使用)
  • 論理的な情報構造

つまり、ユニバーサルデザインに配慮することで、検索エンジンからの評価も高まり、より多くの投資家に情報を届けられるようになります。構造化はAIブラウザでの遺尿もしやすくなるので一石二鳥だと考えられます。

PDFとHTMLの併用
決算短信や統合報告書をPDFで提供するのは一般的ですが、重要な情報はHTMLでも提供することで、以下のメリットがあります。

  • スマホでの閲覧が容易になる(PDFは別アプリ起動が必要)
  • スクリーンリーダーでの読み上げがスムーズになる
  • 検索エンジンが内容を正確に把握できる
  • ページ内検索(Ctrl+F)がしやすくなる

画像・グラフへの代替テキスト
視覚情報を言語情報としても提供します。

悪い例

   <img src="sales-graph.png" alt="グラフ">

良い例

   <img src="sales-graph.png" alt="売上高推移グラフ。2020年1,000億円から2024年1,500億円まで、年平均10%で成長。">

複雑なグラフの場合は、alt属性に加えて、グラフの直前または直後にテキストで説明を記載したり、データをHTML表形式でも提供したりします。

モバイルファーストの設計
スマートフォンでの閲覧を前提とした設計は、すべてのユーザーに恩恵があります。

  • タップターゲットを十分な大きさに(最低44×44ピクセル)
  • ピンチ操作による拡大を妨げない(viewportの設定でuser-scalable=noを使わない)
  • 読み込み速度の最適化(画像の遅延読み込み、不要なスクリプトの削減)

📍 参考にしたい他社事例

NEC様

象印マホービン様

2社のサイトではPDFとHTMLの併用、モバイル対応が適切に行われており、すべてのユーザーにとっての使いやすさを実現しています。またグラフィカルな表現もhtmlで実装されており、マークアップ・データ構造が明確です。


まとめ

ユニバーサルデザインへの対応は、特定の障害のある方だけでなく、すべての投資家にとってメリットがあります。

インクデザインでは、ユニバーサルデザイン対応に長けたデザイナーによるご支援を行っています。既存サイトのアクセシビリティ診断、改善提案、PDFのアクセシブル化など、IR情報発信におけるユニバーサルデザイン全般をサポートしています。

すべての投資家に情報を届け、企業価値を正しく伝えるための第一歩として、自社IRサイトのユニバーサルデザイン対応を検討してみてはいかがでしょうか。

📎 ユニバーサルデザインに関連する記事はこちら


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