「インパクトって何?」をわかりやすく!『中小企業とインパクト編』

ある晩、製造業の中小企業を経営するアキラは、事業に関して悩んでいた。
彼の小学生の息子ケンから「インパクト投資の大切さ」について聞かされ、その言葉がなんか気になりつつも、意味を理解するのに苦労していた。

そんな時、ジュン博士の研究室を訪ね、相談を持ちかけることにした。
ジュンはアキラの父と親交があり、長年にわたるビジネス経験を持つ賢明な人物だった。

ジュン博士、インパクト投資って何ですか?

ジュンは静かに口を開いた。

インパクト投資は、社会的または環境的な良い影響を生み出す事業への投資を指すんだ。特に中小企業にとっては、持続可能なビジネスモデルを構築し、社会や環境に貢献することが重要になるな。

アキラは納得のいかないような顔をして、ジュン博士との会話を続け、新たな懸念を打ち明けた。

でも博士、投資って言っても、私たち中小企業は基本的に投資を受ける立場ではないんですよね。

ジュン博士は理解を示しながら答えた。

確かにその通りだ。しかし、インパクト投資は直接的な資金調達だけでなく、企業価値の向上や新しいビジネスチャンスの創出にもつながる。資金調達のチャンスも増える可能性があるよ。

アキラはうなずいたが、心配の色を隠せない。

でも、中小企業だと、先のことより足元の業績や運転資金の方が問題で、なかなかそこまで意識が向かないんですよね。

ジュン博士は優しく微笑んだ。

それはそうだろう。
しかし、これからサプライチェーンの中で選ばれるためには、ただ、良い製品を提供して、利益を上げるだけでなく、社会的、環境的な価値を生み出すことが重要だ。
持続可能な取り組みは、大企業だけでなく、中小企業にとっても、競争力を高める要因になるよ。

少し納得したような表情でアキラは続ける。

中小企業にとって、リスクはありますか?

ジュン博士は頷く。

もちろんだ。特に初期投資の回収や、事業の方向性を見誤ることなどがリスクとして挙げられる。しかし、適切な計画と実行により、それらのリスクを最小限に抑えることが可能だよ。
またウォッシュのリスクもあるな。

ウォッシュって何ですか?

ウォッシュとは、表面上だけの取り組みを指すんだ。
つまり、本当の意味での持続可能性や社会貢献を目指していない行動のこと。透明性が欠けていると、そのような批判にさらされる可能性がある。

なるほどとつぶやきアキラは続ける。

ウォッシュ、つまり表面的な取り組みにならないためにはどうすればいいですか?

目標を明確にし、透明性を保つことが重要だ。具体的な成果を目指し、ステークホルダーとのコミュニケーションを密にするんだ。
あとは何よりも経営者の情熱と信念だな。
君みたいな経営者ならできると思うぞ。

アキラは期待の表情を浮かべて問う。

では、我々中小企業がインパクトに取り組むには具体的に何をすれば良いんですか?

自社の強みを活かした持続可能なビジネスモデルを考えること。例えば、環境負荷の少ない製品の開発や、社会貢献活動への参加などが挙げられる。さらに、事業のあらゆる面でエコフレンドリーなアプローチを取り入れることも考えられるよ。

日本における事例はありますか?

ジュン博士はいくつかの事例を紹介した。

例えば、ある製造業の中小企業は、エネルギー効率の高い製品を開発し、その売り上げで地域社会の支援を行っている。また、別の会社は従業員の福利厚生に注力し、社会的な評価を高め、結果的にビジネスの成功につながっているよ。

このような実例もあり、小回りのきく中小企業のほうが大胆な行動をしていることも多いな。

大映ミシン:
岐阜県関市のアパレル産地にある大映ミシンは、中古ミシンの寄付を募り、メンテナンスした後で再販売しています。売り上げの一部は社会貢献活動に使われています​​。

浅川造船造・真聖建設:
愛媛県今治市の造船会社と建設会社は、焼却処分されていた足場板をアンティーク家具に再生し、環境保護の姿勢を打ち出しています​​。

丸榮日産:
糸ゴム専門メーカーである丸榮日産は、再生ゴムを使ったランチベルトを開発しました。これにより、環境問題への取り組みを示しています​​。

双葉商事:
インドネシア産の木の実「カポック」を使ったアパレルブランドを立ち上げ、植物由来の衣類を広めることでSDGsの達成を目指しています​​。

シンクシー:
富山県の氷見市では、廃棄されていた魚の皮を活かし、スマホケースなどの商品を製作しています​​。

皆さん頑張っているんですね。
私もやれそうな気になってきました!早速取り組んでみようと思います。

そうだな。行動は大切じゃ。
君のお父さんも行動力の固まりみたいな人だったからな。
中小企業ならではの行動力で大手が出来ないことをやるのが醍醐味だってよく言っていた。

アキラはジュン博士との対話の中で、新たな可能性を感じ始めていた。持続可能なビジネスモデルへのシフトは、簡単ではないが、社会や環境への貢献を通じて、彼の企業に新たな価値をもたらすことになるだろう。

困った時とか専門的なことは、誰に相談すればいいんですか?

ビジネスコンサルタントや業界団体、そして経験豊かなビジネスリーダーに相談するといい。また、財務顧問や法律顧問など専門家の意見を聞くのも有効だよ。

ジュン博士は落ち着いた声で答えた。

アキラは博士に礼を述べ研究室を後にした。
その夜、新たな課題への取り組みに向けて希望を胸に抱きなかなか寝付けなかった。

翌日、アキラはオフィスでスタッフとの会議を開き、インパクト投資について話し合った。
彼は息子ケンに対しても、新たな決意を伝えた。

「パパ、それ聞いて嬉しいよ。これからの私たちの未来のためにも、良い選択だと思うよ!」
ケンは父親の変化に感動し笑顔を見せる。

ジュン博士のアドバイスが、アキラとその会社にとって新たな道を開くことになった。
持続可能な取り組みへの道は簡単ではないが、アキラは自分と会社が社会に与えるインパクトの重要性を理解し、前向きに取り組むことを決心したのであった。

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